待望のプレミア参戦。”戦術マニア”ビエルサ率いるリーズ戦術分析

戦術分析

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フットボリスタ11月号に記事を寄稿しました!
マンチェスター・シティの戦術分析です!

「エル・ロコ(奇人)」の異名を持つ戦術マニア、マルセロ・ビエルサがついにプレミアリーグへの参戦を果たした。試合中にクーラーボックスに座るこの指揮官の姿をプレミアリーグで見られる日を心待ちにしていたファンもきっと多いはずだ。

ピッチを広く使った攻撃とマンツーマン志向の強い守備は、選手に豊富な運動量を求めることとなる。選手にとっては1試合1試合が非常にハードなものとなるが、スペクタクルなプレーの数々は多くのサッカーファンを魅了する。

ここまでリヴァプールやマンチェスター・シティといった強豪にもひけをとらない戦いを披露しているビエルサ・リーズの攻撃戦術について分析する。

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基本布陣

GKは左脚のフィード精度に定評のある20歳のフランス人メリエ。攻撃のキーマンにもなる。

CBには今夏加入したコッホ、ジョレンテ、そしてキャプテンのクーパー。インナーラップの技術を求められるSBは右にパス精度も高いアイリング、左にダラス。

アンカーにはボール奪取、パス技術と攻守にバランスの取れたフィリップスが入る。右IHにはロバーツ、左IHにはスペースに侵入する技術と感覚がずば抜けているクリヒ。

WGは共にドリブル突破を武器に持つハリソン(左)とコスタ(右)が起用される。スタミナ豊富でパスも出せる、非常に脅威となる両翼だ。1トップには長身でプレーエリアも広い万能型のバンフォードが起用される。

ハイライト

リヴァプール戦

Highlights | Liverpool 4-3 Leeds United | 2020/21 Premier League

フラム戦

Highlights | Leeds United 4-3 Fulham | 2020/21 Premier League

シェフィールド戦

Highlights | Sheffield United 0-1 Leeds United | 2020/21 Premier League

マンチェスター・シティ戦

Highlights | Leeds United 1-1 Manchester City | 2020/21 Premier League

攻撃スタイル

リーズはピッチを広く使い、ロングボールを利用して前進する傾向が強い。ロングボールの出し先はCFのバンフォードではなくSBやWGといった大外の選手であり、必ずハーフスペースに抜け出す役目を負う選手をセットで配置している。大外の選手のフリックをハーフスペースの選手が拾って前進するような形だ。

多くの場合ロングボールの出し手はGKのメリエであり、攻撃面において担う「役割の大きさ」は欧州のGKの中でもトップクラスである。細かくパスをつなぐ際も同様にサイドに人数をかけて攻めあがる。

最大の武器となるサイド攻撃

リーズの最大の武器は大外の選手のフリックをハーフスペースの選手が拾って前進するサイド攻撃である。多くの場合、GKメリエからSBやWGにロングボールが送り込まれる。

ただし、リーズはサイドに大柄な選手を配置しているというわけではない。スタメンを張るWG、SBの4選手に185cmを超える選手は一人もいない。WGは180cmにも満たない、至って平均的な体格だ。それでもロングボールを収められる、ハーフスペースを突けるよう施されている工夫がリーズのサイド攻撃を支えている。

上のツイートが、リーズのサイド攻撃の例である。状況に応じて様々な工夫を施している。ポイントとなるのはいかにサイドで選手を「浮かせる」か

大柄でない大外の選手がロングボールを収めるには、敵の居ないスペース、フリーの選手を作り出すのが手っ取り早い。ショートパスの場合も同様だ。フリーの選手を生み出すことで、敵をサイドに誘き出し、空いたハーフスペースから前進する。

具体例についてはツイートのシーンごとに数字を振っているため、1番から見ていく。

①サイドでのオーバーロード

これはCBが大きく開くことで敵SHを誘き出し、WGが張り出すことで敵SBを釘付けにし、SBにフリーの空間を与えている。

IHが関与することで敵CHに対して2vs1の状況を作り出し、ハーフスペースへ侵入することも可能となる。

②上下のポジションチェジを交えたハーフスペース侵入

これはそれほど多くない、IHが降りるケースだ。

IHは基本的にアンカー脇まで降りることはあってもDFラインまで降りることはしない。ただし、守備から攻撃に転じる際は別の話となる。後述するが、リーズはマンツーマンの意識が他のチームよりも強い。そのため、WGやIHが低い位置まで戻るケースも少なくない。そんな時にこういった形が生まれるのだ。

SBには内側へカットインする技術が求められている。なぜなら、大外とハーフスペースの二つを用いてシンプルに前進を図るため、最低限その2つのゾーンの入れ替わりの技術を備えていないと単調な攻撃に終始してしまうからだ。

このシーンでは内側から外側に向かってプレスをかけてくる選手を、敵の勢いを逆利用して内側にいなし、大外→ハーフスペースへと侵入している。

③IHがサイドに流れる

これはIHが流れる、トレンドとも言える動きだ。

あえて3選手が大外に並ぶ形を作る。ここでIHとWGが入れ替わってしまうと、敵のSBとIHが受渡しを行ってしまうこともある。あえて入れ替わらないことでWGが敵SBを釘付けできるため、外に流れるIHが確実に敵のIHを外に誘き出すことができるのだ。これによりハーフスペースが空くため、SBがインナーラップを仕掛けることができるようになる。ロジャーズ・レスターが得意としている戦術だ。

④IHがサポートに降りる

これは大外で受けたSBに対して、IHがサポートに降りる形だ。

リーズのIHは3トップと並んで5トップを形成するほどに高い位置をとることが少なくない。仮にGKから最前線にボールを送り込めば、4バックvs5トップでセカンドボールを拾う確率を高められるような人数だ。

敵IHはDFラインまで下がってついていくことはせず中盤に留まり、サイドのケアに出ることが多い。そうなった際にIHが降り、SBの補佐に入る。

①との違いは、IHが降りてサポートするのか、上がってサポートするのかの違い。降りてサポートすれば、敵のDFラインに穴をあけることもできる。

⑤IHとアンカーの連動

これはサイドのオーバーロードに加え、IHとアンカーの連動した動きにフォーカスしている。

通常ハーフスペースを突くのはIHかインナーラップしたSBとなるが、アンカーも同時にハーフスペースを前進してサポートを行うケースがある。

ビルドアップに詰まった際にIHがアンカーの脇まで降りることがある。アンカーの脇で顔を出し再度前進した際に、敵を引き連れることができれば、空いたスペースにアンカーが連動して移動しパスを受ける。

⑥「エリア」へのパス

これが最もシンプルな形だ。

ロングボールをWGがフリックし、IHもしくはCFがハーフスペースで拾って前進する。この時に送り込むロングボールはWGの居る位置よりも手前にショートするようなボールを送るのがポイントだ。

リーズはポジションを広く取っているため、敵の守備ブロック・選手間の距離も広くなる傾向がある。敵が横に広がることで、パサーとしては出し先の選手の「足元」に送るのではなく、出し先の選手の居る「エリア」にパスを送ることが許される

リーズはこの「エリア」へのパスを使うことが多い。ショートするボールであれば身長差があろうと邪魔をされず、敵を釣り出しつつハーフスペースに確実に繋ぐことができる。敵を動かせる、釣り出すことができる、というのがポイントだ。

また、パスにメッセージ性を込めやすくなる。

メッセージ性というのは「パスを受けたらこうしてくれ」という受け手に対するパサーからのメッセージであり、上図のような例だ。エリアへのパスとなるので受け手の身体の向きまでもパサーが指定するようにパスを出せるため、より伝わりやすくなる。

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アタッキングサードでのサポート

リーズは前進の意識が非常に強いアグレッシブなチームだ。それゆえに、サポートのポジションも非常に攻撃的だ。アタッキングサードまで前進しサイドでボールを持つと、ボールホルダーの両脇を駆け上がるように、逆三角形のサポートが入る。敵の4バックと相対する場合は外側とチャンネルを突くようなサポートとなる。

サイドを問わず顔を出すIH

リーズのIHはサイドを問わず顔を出す傾向が強い。特にチャンネルに抜ける動きに関しては、逆サイドからも平気で走りこんでくるため、守備陣からすると捉えにくい動きとなっている。中でも特筆すべきはクリヒの動きだ。

ウィークポイント

この攻撃を展開するうえでの弱みとして真っ先に挙げられるのは当然、サイドでの優位を確立できなかった場合である。

例えば4-3-3で守るチームのWGが的確にSBを消しながらプレッシングをかければ、ロングボールは大雑把なものとなる。サイドに大きく広がった陣形をとるため、ロングボールを回収できれば中央には広大なスペースが広がっており、ショートカウンターを仕掛けやすい。

また、左利きのGKメリエは、左サイドへのロングボールを得意としているが、右サイドへのロングボールはほとんど蹴らない。これは彼のキックの得手不得手に関係する可能性もあるが、なんにせよ守備側としてはメリエの左脚もしくは左サイドへのフィードを阻害するような守備方法をとれば、リーズの起点を抑えることができる。長い時間ボールを自身の足元に保持することを好まない一面もあるため、睨み合いのような状態になった場合は焦って蹴り出し、キック精度が落ちる。

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守備戦術

守備戦術についても簡単に触れておく。

ビエルサのチームらしく、リーズもマンツーマンの意識が強い。当然ピッチの端から端までマンツーマンとはせず、ある程度の受渡しは当然行うが、WGやIHがDFラインまで下がって守備を行うことも少なくない。

例えば5バックを採用するシェフィールド戦では、WGのハリソンが敵WBのバルドックと最終ラインで対峙するシーンもあった。結果的にハリソンがバルドックにターンを許しリーズがピンチに陥ったように、ミスマッチを突かれる可能性が非常に高いものとなっている。WGの体力の消耗も激しい。

前線の方が受渡しの意識が低く、敵DFが横や斜め方向にドリブルを行った際にカバーが利かず、面白いように前進されるケースも少なくない。

リーズの守備は、単純に守備の局面だけ見れば十分には機能していないともとれる。しかしトータルで見てみると、オープンな展開と敵の間延びを誘えるという効果を持つ。大きく広がって敵の守備陣形も広げ、空いたスペースへのパスも利用しつつ攻撃を行うリーズにとって、安定したブロック守備を行われるよりもオープンな展開に持ち込んだ方が彼らの強みと武器を利用しやすくなる。

走れる選手が揃っている点もアドバンテージだ。そういった意味では守備が攻撃に好影響を与えている。いわゆる「強いチーム」にみられる局面間の作用が働いているのを見て取れるものとなっている。

おわりに

開幕4試合をベースに、ビエルサ・リーズの戦術の特徴を観察してとりあげてきた。今回取り上げたのはこのチームの代表的な特徴であり、まだまだ紹介すべき点や深く観察しなければならないという潜在性を感じさせる事象が多数存在する。

シェフィールド戦のように相手が2トップであれば3バックでのビルドアップも行う、といったのはその最たる例だ。広大なスペースを生み出す攻撃陣形、守備方法をとっているため、様々な連携が生まれやすい環境にもなっており、毎試合違った形を観られるはずだ。

ここまではリヴァプールやマンチェスター・シティといった強豪との対戦もありながら内容・結果共に見事な戦いを披露している。今季最注目のリーズについてはシーズン通して追っていきたい。

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