今や最もバランスの良い攻撃配置ともいえる3-2-5。このシステムで攻撃を行うチームがそのまま守備に移行すれば、両翼を下げた5-2-3となる。つまり、3-2-5の普及に伴い5-2-3守備のチームも増えている。
同一システムが増えることでミラーゲームも増える。ガッチリとかみ合って優位性の作りにくい状態だと、攻撃側としてはやりにくいものだ。逆に守備側としてはマークがはっきりして守りやすい。
どの守備システムにおいても、苦手とする攻撃手法やシステムは存在する。上記の4-4-2も同様だ。当然、同じシステムと言えどプレス開始位置や奪いどころの設定に応じて得手不得手は変わってくるため、一概に言うことはできない。
そこで今回はミドルブロックを想定し、5-2-3(5-4-1)に対する攻略方法(十分なスペースと選択肢を保った状態で前進していく方法)について論じていく。
5-2-3に対して狙うべきエリア
5-2-3に対して狙うべきエリアは下記の通りだ。
①CFに対する優位性
これはどのシステムでもいえることであるが、1トップに対して2CBで優位性を生むことでボール保持を安定させることができる。
②アンカーへの対応
CHのうちどちらかが前進すれば、その背後が空く。シャドーが絞ってパスコースを切れば外が空く。
③大外レーンの対応
WGを張らせることで、WBを釘付けにすることができる。もう1枚サイドに置くことでフリーを生み出すことができる。
④HVの手前と背後
前進してCHの脇をケアするか、自身の背後をケアするかという、「一方しか塞げない二択」を迫っていく。1人でも可能だが、2選手が裏と手前を狙うと効率が良い。5枚が幅を守る=薄く広がった守備に対して厚みで攻める。DFが絞って対応すれば幅を守れなくなるため、外が開きやすくなる。
これから取り上げる各アプローチに関して、上記のどのポイントを活用したものなのかにも触れていく。
また前提として、狙うエリアと配置だけでは攻撃にならない。いかにパスを回していくのかという点が考慮されている必要がある。
4-2-4による攻略方法
5-2-3攻略において有効なのが、4-2-4によるアプローチだ。上記ポイント①、③、④を突いていく。
CFに対して2CBで優位を築き、CFがHVを釘付けにしSHがその手前、ハーフスペースに絞っていく。CFの釘付けによりHVが前進できないため、SHはCH脇でフリーになることができる。レーンをまたぐ斜めの動きを入れるとより効果的である。
仮に敵WBが絞って対応すれば、SBが前進して幅を使う。SBを警戒してシャドーが開くのであれば今度は中央が空くため、CHを起点に攻撃を展開していく。
敵WBが前から潰しに前進してくる場合はHVがカバーしなければならないエリアがより広くなる。
3-2-5による攻略方法
次に3-2-5による攻略方法だ。そのままだとミラーゲームで嚙み合ってしまうため、ポジションに変化をつける。これは、相手のシャドーがサイドを警戒して引いて5-4-1を形成する際にも役に立つ。ポイント①、②、④だ。
まずはCFに対する優位だ。CHが降りることで2vs1を作る。DFラインに降りるというよりも、相手のCFとSHの間に降りるイメージだ。自分たちベースではなく、相手ベース。そうすると、CHが前進するかSHが絞るかでしか対応できない。動いた選手が空けたエリアから前進していく。CHのもう一方がアンカー位置、シャドーが1枚降りることで高さの違う三角形を形成するのは圧倒的な強さで三冠を達成した22-23マンチェスター・シティの得意技だ。こうして前線の選手が前を向いてボールを受けると、周囲の選手は背後を取る動きやワンツー等でファイナルサードを攻略していく。
IHがサイドに流れることでフリーを得るのも有効な手段だ。大外の選手がWBを釘付けにすることで、その手前に流れ降り、攻撃を組み立てていく。ポイント③だ。
4-1-5による攻略方法
これは上述の変形3-2-5の派生だ。ポイントとしては①～④まで全て網羅されている。WGが内側に絞り込み、SBがオーバーラップを仕掛けるローテーションで大外を突くことも可能だ。ただし、前傾気味で中盤の枚数が少ないため、ネガティブ・トランジションに注意が必要となる。
3-3-4による攻略方法
最後に3-3-4だ。ポイントとしては②、④である。
3トップvs3トップで噛み合う形とはなるが、アンカーを加えたうえで3バックが深さをとること、WBがサイドでパスコースを作ることでプレスにはまらないようにサポートする。特にCBとアンカーによる敵CFに対する数的優位の確立は重要だ。CBが深さをとらなければアンカーとの距離が近づき優位性が消えてしまう。
そして、強みとなるのが中盤での数的優位だ。IHが敵CHの脇にポジションをとることでフリーとなり、パスコースを生み出していく。
IHがサイドに寄って立つ、もしくはWB裏に流れることでサイドで数的優位をもたらし、相手のマークがついてくれば、中央のルートも空きやすくなる。
2トップが縦関係になれば、手前の選手がCHの間でフリーになりやすくなる。敵2CHの両脇と間で、2IHとFWが顔を出す形だ。
HVが前進すれば空いたスペースに抜け出すこともできる。
優位性が作りにくい場合はアンカーが降りるのも一つの手段である。周囲がバランスを取りつつ、ネガティブ・トランジションに備えて失い方に注意する必要がある。
おわりに
今や主流となった3-2-5に対する5-2-3システムによる守備。これに対する有効な攻め筋についてみてきた。4-2-4、3-3-4に加え、3-2-5のミラーとなった際の打開策は、どれも実例を元にしたものである。
5バックを崩せないというチームは多い。敵5トップに対して5バックが噛みあうからだ。そんな時にいかに状況を打開するのか？手段は1vs1で上回るだけではない。配置の工夫で状況を変化させることも可能なのである。
