前回の記事ではユベントス戦におけるナポリの守備構造について触れた。今回はレビュー編として、そのナポリの守備が試合に及ぼす影響、ユベントスの対策等について書いていく。
ナポリのユニット攻撃
チャンネル攻撃
ナポリのプレッシングに苦しむユベントスは徐々にボールを保持できなくなっていく。保持の試み自体は前半中続いたため、自らの意思で放したというわけではないだろう。
4-4-1-1で守るユベントスに対してナポリが狙ったエリアはチャンネルだ。
ユベントスは開始10分程でキエッリーニが負傷退場。右CBにヘヴェデス、右SBにリヒトシュタイナーが入ったが、右SHのコスタを含めたこの右サイドのラインの連携がとれていなかった。そこに目を付けたのがハムシクだ。
コスタは素早くプレッシャーをかけたがるタイプだ。それに連動したのか、リヒトシュタイナーも積極的に飛び出していく。対してヘヴェデスはほとんどスライドをしない。その意識の差により空いたチャンネルをハムシクに使われ続けた。インシーニェvsリヒト、ルイvsコスタで前へ外へと釣り出され、チャンネルに抜けるハムシクをケディラが追いかける構図だ。途中からヘヴェデスとベナティアが左右を入れ替えたのも、その辺りが要因だろう。
シーン1は表抜けという技術だ。背中側ではなく敵の前を抜ける。裏抜けとは違いボールと自分の間に敵を挟まないので、確実に敵より先にボールに触れることができ、シュートへとつなげられる。
シーン4は2vs2における受渡しの処理を狙ったプレーだ。真横をすり抜ければ、敵は味方との衝突を恐れて上手く受渡しを行えない。
バックドア
次第に重心が下がりボールホルダーにプレッシャーがかからなくなっていくユベントスに対し、ナポリが狙ったのはDFの背後を狙ったバックドアだ。
シーン1はインシーニェがリヒトを釣り出したのを合図に3人が飛び出していく。
ハムシク:リヒトが抜けて空いたチャンネルへ
メルテンス:ベナティアの手前からヘヴェデスの背後に移動したのちに飛び出す。受渡しのミスを生じさせるテクニック。
カジェホン:3人の中で最も横の移動距離が長く、加速して裏へ
シーン2は、メルテンスが横にずれたのを合図に、空いたCB間へインシーニェが長い横移動で侵入。
両シーン共にホルダーへのプレッシャーがかかっていないため、受け手の準備さえ整えばどのタイミングでもパスを出せる状態であった。得点の匂いを感じさせたシーンだ。
アッレグリの策
ユベントスもただでは終わらない。アッレグリはいくつかの修正を施していく。ただ、ユベントスはドローで勝ち点差4のまま次節を迎えることができれば十分である、というのが前提となっている。
①ベナティアとヘヴェデスの入れ替え
これは上述の通りだ。
②ディバラ→クアドラード
後半頭からのこの交代は意外であったが、ドローを狙うという意味では効果十分であった。
システムを4-4-1-1から4-5-1に変更。まずは中盤の5枚で確実にナポリの選手を捕え、縦のスピードを落とす。ナポリがゆったりとサイドに人数をかけだすと同時にユベントスの中盤5枚もボールサイドに圧縮をかける。この時、中央の3枚のうち1人が飛び出し、守備に厚みも加える。この策が効果的に決まり、ナポリの攻撃も停滞した。
③マンジュキッチの投入
SBとの高さのミスマッチを作り出しフィニッシュ役とロングボールの収め役として活用するこの起用は既にお馴染みだろう。今回は回数こそ少なかったが、効果的にきまるシーンもあった。
以上3点がアッレグリの策だ。結果には結びつかなかったものの、どれも効果自体は感じられる、さすがの采配であった。
おわりに
試合を決めたのは終了間際、クリバリのヘディングシュート。決まった瞬間、そして試合終了後の歓声と喜びはすさまじいものでした。
正直私は面白いサッカーさえ見られればそれで良い、記録に残らずとも記憶に残れば良いと思うタイプですが、この試合は熱かった…!そして、実際に戦っている選手たちはやはり記録にも残りたいと願っているでしょう。
これだけ魅力的なサッカーで楽しませてくれた選手たちが願うのならば、私も願わずにはいられません。
1年間楽しませてくれたこのチーム、この選手たちの願いが成就することを切に願う…
とんとん。