【Jリーグ開幕記念】松本山雅とジュビロ磐田~戦術的特徴と課題②~

戦術分析

同時投稿、「【Jリーグ開幕記念】松本山雅とジュビロ磐田~戦術的特徴と課題①~」の続きです。是非前編からご覧ください。

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対照的な「抜ける」・「流れる」の動き

2チームで対照的だったのが前線の選手の「抜ける」動き、「流れる」動きの頻度だ。山雅は速攻をかける際、前線3選手が頻繁に外に流れる。SB裏を執拗に突く形だ。遅攻の場合、前田とセルジーニョは同様に流れる動きを見せる。

例として55分のシーンを見てみよう。

山雅のパス回しは5バック間、WBから逆サイドのWBへと回す中で楔を打つタイミングを図る。その時のWGのポジショニングはハーフスペースとなる。例えば岩上へとボールが渡った際、ハーフスペースに位置する前田は外に流れる動きを見せる。この動きでCHやSBを外に引っ張り、岩上→CF永井のパスコースを空ける。永井はワンタッチでDFラインの背後に送り込み、加速した状態の前田が侵入する。これは左サイドでも同様のプレーが見られる。

以上が山雅の遅攻に見られた「パターン攻撃」だ。これはサッリ・ナポリやチェルシーが得意とする「3オンライン」及び「サイ」という強力な攻撃パターンであり、山雅のひとつの武器になりそうだ。

ではジュビロはどうか。ザックリ言うと上の例で、セルジーニョと前田の位置をとる選手が抜けてくれない状態だ。山雅は3枚のDF+2CHで中央を固めるため、この試合ジュビロが行うべき抜ける動きは中央を薄くするというよりもサイドで確実な数的優位を築くため、そしてDFラインを下げるために行う必要があった。

セルジーニョ・前田の位置の選手が抜けないとどうなるか?

・中央に敵味方が入り乱れる大渋滞が起きる。
・スペースは生まれずCFの選択肢は消える。
・動かないならマークにつきやすいので、単純に彼等の足元にパスを出すのも憚られる。
・ボールも人も動かないため、敵の守備ブロックも動かずに対応できる。
・数的優位を築けるはずのサイドでさえ優位を築けない。

ジュビロの停滞感の理由はこういったところだろう。
是非上でも紹介した日本代表の例を見てほしい。

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経過と共に苦しくなった山雅

山雅は前半こそカウンターでゴールを脅かしたが、時間が経つにつれその頻度は減っていった。理由は、押し込まれてWGの立ち位置が低くなったから。

押し込まれたのはWGの体力消耗により前線のプレスがかからなくなったから。仕組みではなく走力で奪いにいくチームのため、消耗も大きく、早いのだろう。さらにはジュビロの川又投入も要因の1つだ。前線で張り、ターゲットと成りうる彼がDFラインを押し下げる役目を果たした。シンプルなサイド攻撃を完結する力もあり、同点弾を叩きこんだのも偶然ではない。

WGが守備に走らされ、位置が低くなり、スタミナを消耗すればカウンターの望みは非常に小さくなる。こうなる前に得点を重ねるか、虎の子の1点を死守する守備固めを行うか。その舵をいかに取っていくかが、山雅にとってこのシーズンの大きなポイントになるだろう。

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おわりに

なんとなくでも両チームの特徴・強み・弱みが伝われば、と思って書いてみた。昨年の順位・ディビジョン、そしてこの試合を観て、両チームともにまずは残留を目指そう、という位置づけなのかなという印象だ。これ以降、両チームがどう進化していくのか注目である。

山雅は難しいことを一切しないシンプルな戦い方だ。走って、奪って、前へ。効率化に関しては未着手のようで、息切れを考慮したゲームプランが必要だろう。ジュビロに関しては前線の流れる・抜ける動きが少なく停滞するというのが最大の課題であり、こういう時こそ元気に動き回るタイプの若手が雰囲気を変えるのでは・・と思ったり。

開始時点で知っている選手が俊輔と大久保しかいない!昨年のチーム状況、採用している戦術分からない!というJ知識の乏しさなので、想像より観るのも書くのも大変だった。そもそも海外と違い情報の入手が容易く、観光やスタグル、各種イベント等、手軽で多様な楽しみ方のできるJリーグにおいて、戦術というニッチな分野に需要があるのか否かが私には分からない。

といことで楽しめたとはいえ大変なので、需要が無かったらやめて住み家に戻ろうと思った(笑)。

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