スールシャール率いるマンチェスター・ユナイテッド攻撃戦術分析

戦術分析

前編 「スールシャール率いるマンチェスター・ユナイテッド守備戦術分析」の続きとなります。

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基本布陣

GKには神懸かり的なシュートストップを見せるデヘアが君臨する。

CBには圧倒的な冷静さと対人守備を誇るマグワイア、相方にリンデロフ。

右SBにはチームトップのタックル成功数を誇るワン・ビサカ、左に攻撃面での貢献が光るルーク・ショーが配置される。

攻守に万能で欠かせないピースとなりつつあるマクトミネイ、アジリティと守備能力に長けショートパスでリズムを作れるフレッジが中盤でコンビを組む。

右SHにはドリブルと高さのあるラッシュフォード、左SHにはCFもこなすマルシャル。

トップ下に攻撃の要となるブルーノ・フェルナンデス、CFに献身的な守備とゴール前でのオフザボールに長けたカバーニが配される。

ハイライト

アーセナル戦

Highlights | Arsenal 0-0 Manchester United | Premier League

マンチェスター・シティ戦

エバートン戦

ブルーノ・フェルナンデスの役割

マンチェスター・ユナイテッドの攻撃は、シーズン折り返しとなる19試合で11G7Aを記録したトップ下のブルーノ・フェルナンデスを中心に回っていると言っても過言ではない。

フェルナンデスは広範囲に動いてパス回しに関与するタイプのプレイヤーだ。そんな彼が担う役割は大きく2点。一つは低い位置に降りる、サイド高い位置に流れることで数的優位を作り出す役割。そしてもう一つがピッチ中央にスペースを作り出す役割だ。

おおまかにまとめると以下の通りだ。

・サイドでの数的優位ができ、パス回しが円滑になる。
・サイドに移動することで中央にスペースが生まれる。そこに味方が侵入することでスペースの連鎖が生まれ、パス回しが円滑になる。
・フェルナンデスが降りることで別の選手がリスク管理から離れて前進できる。ポグバが上がれば高さ、マクトミネイが上がればミドルシュート、ラッシュフォードが中央に入り込めばドリブルといったように、ゴール前で別の脅威を与えることができる。
・低い位置での組み立てから列を上げて追い越す動きを入れることで、フリーでDFラインを掻い潜ることができる。

フェルナンデスが「居ること」で、フェルナンデスが「居ないこと」で、フェルナンデスが「突然現れること」で、ユナイテッドの攻撃は活性化している。

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サイド攻撃

モイーズ政権下では1試合で81本ものクロスをあげながら無得点に終わるなど揶揄されたサイド攻撃、クロスボール戦術も今やユナイテッドにとって効果的な攻撃手法となっている。

左サイドではショーとラッシュフォードやマルシャル等SH陣に加え3人目が関与することでシンプルにボールを前進させていく。基本的に大外のショー、ハーフスペースにマルシャル、3人目としてCBのマグワイアが関与することが多く、大外のショーにボールが入る時点での位置的関係で勝負が決することが多い。

マグワイアはボールを持って前進を試みる。この時点で先述の位置関係が築かれるのだが、このハーフスペースを活用した攻撃に対する敵のリアクションで攻撃の道筋が上のツイートのように変わっていく。

敵にリアクションを促す初期位置が重要となっている。マルシャルをどのように見るか、という点が最大のポイントとなるが、敵のリアクションに応じてさらに高い位置へとポジションを移すショーの動きもポイントとなる。

基本的にSBvsSB、SHvsSHという構図を作り出すことができればシンプルにチャンネルを陥れることができる。ここを突くためのショーとマルシャルのポジション取りが優れており、そこから五月雨式に中央のカバーニやフェルナンデス等もDFラインの隙間にランニングを入れて敵陣を崩していく。

この狙いを動的に、ポジションチェンジを駆使して実行したのが上のツイートだ。3人目のサポートを使いながら「抜ける」、「流れる」のローテーションでチャンネルをシンプルに陥れることができる。

こういったプレーでも敵陣を穿つことができなかった場合にクロスボールを送り込む。

ユナイテッドのクロスはサイド深くに侵入してのクロスよりも、ペナルティエリアの角付近からアウトスイングでファーサイドに送り込むことが多い。

浅い位置からの柔らかいボールは、DFからすると下がりながら処理を行う必要があり、対応が難しい。また、山なりのボールとなるため、予め待ち合わせ場所をファーサイドと決めておけばピンポイントで合わせやすい。

さらに注目すべきはカバーニのゴール前での動きだ。

配置的にCBとのマッチアップの多い彼はファーのSBとCBの間に位置する。その状況から一度SB側に流れることでCBの守備範囲から脱出する。

そうなるとカバーニのマークは必然的にSBへと引き継がれる。SBvsカバーニのマッチメイクが実現した状態でカバーニがゴール前に斜めに入り込めば大外のSHが浮く形となる。

このゴール前を混乱に陥れるカバーニの動きもユナイテッドのクロス戦術を引き立てている。

浅い位置からの緩いクロスはGKとDFの間に落とされる。そのため敵の人数が足りており上述の動きが効果的に機能しない場合は、いち早くGKとDFの間に到達するために斜めではなくまっすぐ裏に飛び出していく

右サイドではフェルナンデスが3人目として関わり、彼を中心に敵を押し込んだ状態でパス交換から守備ブロックを崩しにかかる。フェルナンデスの項に記載した内容である。

ビルドアップでの意識

ビルドアップの軸となるのは2CBと2CHとなる。2CHが自在にポジションを移動してボールを中継するのだが、この2人の連携および2CBの共通意識がユナイテッドのビルドアップを支えている。

フレッジとマクトミネイは基本的に近い距離感を保ち、時に同サイドで縦関係を作りながら攻撃の組み立てを行う。サイドに縛られないポジショニングである。CBだけでなくSBにも2つのパスコースを提供することができるようなイメージだ。

アジリティに長けたフレッジは狭いスペースでも細かいパス回しや鋭いショートパスを打つことができ、受け手となるフェルナンデスとの相性も抜群だ。

マクトミネイはアジリティこそ無いが質の高いロングボールを蹴ることができ、2人ともシンプルにボールを捌くことができる。

フレッジとマクトミネイが共通して長けているのは「ハブとしての働き」だ。

例えば上図の通りリンデロフがボールを持った際にSBへのパスコースが切られていたとする。しかし敵はカバーシャドウで守っているため、SBに通すことができればサイドの大きなスペースを獲得できる、という局面でマクトミネイが顔を出す。そしてマクトミネイを経由してSBのワン・ビサカへパスを送る。この中継点、「ハブとしての働き」がチームのパス回しを円滑に保つ秘訣となっている。

当然マクトミネイやフレッジがその状況を察知できている必要がある。しかしそれ以前に彼らにボールを入れるリンデロフやマグワイアがCH陣の考えを理解している必要がある

このCHをハブとして利用するという共通理解があることがチームとしての強みとなっている。ここでCB陣がCHにパスをつけなければこのビルドアップは瓦解する。

CBがなかなかCHにパスをつけないのであれば、SBのワン・ビサカはCBから直接パスを受けられるように下がってサポートを行い、狙いたいスペースを即座に突ける位置から遠ざかってしまう。これは無駄に後方にかける枚数が増えてチームの重心が下がることを意味する。

リンデロフとマグワイアはCHにボールをつける意識が強く、それがビルドアップに好影響を与えている。細かくCHにボールを当てることによる利点をチームとして正しく組み込み、機能させているのだ。

おわりに

ユナイテッドは選手個々人の能力が高く、各選手がその能力を最大限に活かせるようベースが築かれている。

程度の差こそあれ主軸が抜ければ機能性が落ちるのはどのチームでも一緒だ。しかしユナイテッドの場合攻撃の要となるブルーノ・フェルナンデス、守備の要のマグワイアが不在の際は思い通りの展開に持ち込むのがより難しくなるだろう。ここまでこの2選手はほぼフル稼働の状態が続いている。

彼らが不在の時にどのように穴を埋めるか。スールシャールの特徴が「選手一人一人の特徴を最大限活かし、かつチームとして機能させる」ことであるとすれば、まさに腕の見せ所。真価が問われる部分となるだろう。

  個人的に今のユナイテッドは結構好きでした。

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