26-27シーズン。バルセロナが、ラ・リーガでロケットスタートを切った。CLを含めると、36得点8失点で無傷の8連勝。1試合平均4得点を超える、圧倒的な火力を見せつけている。
今夏に行われたワールドカップでのスペイン優勝メンバーが多数在籍するチームは、まさに勢いそのままといった好調ぶりである。
今回の動画では、スペイン代表との比較も交えつつ、爆発的な攻撃力を誇るハンジ・フリック率いるバルセロナの攻撃戦術を中心とした戦い方、そして今後の懸念点を紐解いていく。
チームスタイル

バルセロナには、2026W杯スペイン代表に選出された選手が7名。その内、スタメン格が5名も名を連ねている。
今シーズンは、左SBの新星、エスパルトの起用が増えている。カンテラ育ちの若手も多く台頭している中で、夏にはロドリ、アデイェミ、ゴードン、ジェズス、カンセロといった戦力を補強した。
強みとなるのは、何と言っても爆発的な得点力だ。1試合平均4得点を超える火力は、スペイン代表に通ずる攻撃の土台の上で、ヤマルやラフィーニャといった個人能力が最大化されることによって成り立っている。
ブロック守備を構築する機会は少ないが、相手を追い詰め、攻撃に転じるためのプレッシングは鋭さを見せる。
ここまでの戦いにおいては、多くのポジションで積極的なターンオーバーが目立つ。

昨季のCLベスト4のチームを参考にすると、PSGを中心に、厚い選手層やターンオーバーを駆使して勝ち残っている。特にPSGは、総プレー時間の6割以上に出場した選手が4名のみと非常に少ない。詳しくは、PSG戦術分析動画にて。

図は、今季のバルセロナのリーグ戦7試合、CL1試合の計8試合終了時点での、各選手の出場時間だ。
トータルタイムの7割以上に出場している選手は、ヤマル、ラフィーニャ、ジョアン・ガルシア、ペドリ、クバルシの5人。6割だと10名に達する。計17名が、比較的長い出場時間を確保しており、ターンオーバーのメンバーに組み込まれている状況だ。
昨季のPSGには及ばないものの、今後ガビ、ジェズス、バルデ、フレンキーといった実力者達の出場時間が延び、ヤマル、ラフィーニャをはじめとした絶対的な選手を温存することができれば、CL制覇を視野に入れた長い戦いにおいて優位に立つことができるだろう。
フリックが選手のモチベーションを維持し、巧みにマネジメントができるか。手腕が問われる。
攻撃局面における目標と手段

バルセロナの攻撃において、根底となる考え方は、スペイン代表と同様だ。
・ボールホルダーが前向きフリーの状態でボールを運ぶ、もしくはパスで敵守備ラインを越える
・味方に動き出しの時間とスペースを与える。
スペインという国に根付いた、文化のようなものである。
攻撃の起点となるCBは、ボールを運び、時には前方に抜けることで相手を動かし、味方にスペースを与える。
そんな彼らが前を向けるように、アンカーのロドリが敵の守備の1stラインに入り、点を打つ。
SBは、コンビを組む強力なWG陣にスペースを与えるようにサポートする。強力な個人能力を持ち、決定機を生み出すことができる前線のプレイヤーに対し、いかに前向きに仕掛けられる状態を提供するかという視点が重要となる。
1stラインを越えると、中盤の数的優位やサイドでのローテーション、そして、WGのカットインを用いて、内と外につながりを持たせて守備ブロックを引き延ばしつつフィニッシュへと向かう。
最終局面においては、ラフィーニャやヤマルの個人能力の最大化が、最も効率よく得点を生み出す手段となっている。
ビルドアップと前進の手段
攻撃の土台となるビルドアップ局面では、前向きフリーの選手を作り出し、相手を引き付け、前方にスペースを生み出しつつ1stラインを越えていくことが求められる。

バルセロナではより確実にボールを運ぶために、ショートパスが主体となる。グラフは、欧州5大リーグで1試合平均パス本数が多いチームトップ40における、ロングボールの比率を表したものだ。
チーム名右側の括弧は、 1試合平均パス本数の順位となっている。1試合平均パス本数が3位のバルセロナは、ロングボールの比率が非常に低い。不確定要素を排除して前進していることが読み取れる。ただし、これは良し悪しではなく、特徴を示したものであることを理解する必要がある。現代サッカーにおいて、ロングボールは必須ともいえるものとなっているからだ。
ビルドアップで生み出したスペースを活用し、中盤ラインまで越えていくケースも多い。そのためここでは、ビルドアップと、敵中盤ラインを越える前進の手段をセットで見ていく。
まずは、CBとサイドの選手による前進だ。

CBのクバルシとマルティン、クリステンセンは、フリーであればボールを運んで相手を引き付け、受け手に動き出しの時間を与える。
斜め外側にボールを運ぶことで相手の守備ブロックをサイドに引き付ける。このスライドを引き起こすのもCBの仕事だ。ボールの受け手にとって、敵の矢印の逆を取ることで、マークを外しやすくなる。逆を取らせるために矢印を誘発するのだ。

WGのゴードンが斜めに絞り降りる、もしくはSBのエスパルトが斜めに前進してハイハーフを取るローテーションを行うことで、CBからのボールを引き出し、守備ラインを越えていく。

楔が入らない場合、CBはエスパルトにボールを預けて抜ける動きを頻繁に行う。これも、ここまでのバルセロナの特徴的な動きだ。
彼らの外側への運ぶドリブル、そして抜ける動きは、相手のCFを外側に引き付ける効果を持つ。ボールを受けたエスパルトは前方ではなく内側にボールをコントロールし、味方と繋がり、次に取ることのできる選択肢を増やすようなプレーを優先する。

エスパルトは、左CBのマルティンやクリステンセンがボールを運ぶ前、ボールを受けるタイミングでハイハーフに移動するプレーも見せる。このプレーは敵SHを内側に引き寄せることで、WGのゴードンへのパスコースを空けるという効果を生み出している。
得点機会を生み出す能力が高いWGの選手に対し、いかにスペース豊富で前を向ける形でボールを届けるか、という点が重要である。
ここでのゴードンは、敵中盤ライン上か、越えた位置でボールを受けなければ意味が無い。そのため、必要に応じてマルティンがボールを運び、相手の引き付けを行う。
パスとは、受け手と出し手の合作だ。ボールホルダーであるマルティン自身も、パスコースを作るためにボールを運ぶ必要があるのだ。

当然、エスパルトへのパスコースが空いていれば、楔を打ち込んでいく。エスパルトは正確なボールコントロールを有しており、ライン間で細かなパスワークをこなすこともできる。

ゴードンの良さは、外と内をリンクさせるドリブルだ。ゴードンはサイドでボールを受けた際、無理な仕掛けをすることがほとんどない。勝てる勝負を選び、突破が難しければ相手の囲いを抜けるように内側にボールを運び、味方に預けることができる。
このプレーは、サイドに相手を引き付けつつ押し込み、逆サイドにスペースを生み出すうえで大きな効果が得られるプレーだ。このプレーの先には、逆サイドでの楔等が生まれやすい。
決定機を生み出すというよりも、相手のプレスを回避して攻撃の選択肢を広げるという意味合いが強い。前進途中でのプレーとなるため、ここまでゴールが生まれていない。
しかし、チームが、先の局面を優位に進めるために有効なプレーとなっている。
例えるなら、22-23シーズンで3冠を達成した、マンチェスター・シティにおけるグリーリッシュのような役割だ。彼も、この記録的なシーズンにおいてリーグ戦で5得点のみに留まっているが、大きな役割を果たし、チームは3冠を達成している。WGと言っても、ゴール数だけが全てではないのだ。
ゴードンのパス成功率は、ヤマルやアデイェミの81%に対して、89%と非常に高い。これは、欧州5大リーグで4試合以上に出場するウイングの選手の中で4位に位置する。

ボールの受け方も多彩だ。対峙する敵SBが低い位置で構える場合は、絞り降りることで余裕をもってエスパルトからボールを受けることができる。

右SBを務めるクンデやエリック・ガルシアは、ハーフスペースに絞った位置でビルドアップに関与するケースが多い。ここにSHを食いつかせることで、ヤマルにボールを届けるための余白を残す。ヤマルにとっては、真後ろからのパスでなく、角度がつくため、敵SBや前方の状況を伺いながらボールを受けることができる。また、ヤマルにボールが入った時に、敵のサポートが届きにくくなる。カットインからの展開が得意なヤマルにとって、能力を最大限に発揮できる環境が整うのだ。
選択肢と安定をもたらすロドリ
こうして、前線にスペースを提供するようにビルドアップを推し進めるDF陣と、深く関わりを持ってプレーするのが、アンカーのロドリだ。

例えば先に挙げた、CBが前方に抜ける動きによって敵CFの空けたスペースに入りこむのが、ロドリだ。
ロドリは、敵味方の動きやパスの流れを確認し、敵の守備の1stラインにポジションを取るのが抜群に上手い。
ロドリがこの位置でボールを受けると、前向きフリーの状態となる。1stライン上で前向きフリーとなると、1stラインの選手がスライドして対応するか、中盤ラインの選手が前進して対応に出てくる。1stラインの選手がスライドすれば、別のCB陣がフリーとなり、中盤ラインが前進すれば、前線の選手が利用するスペースが生まれる。いずれの場合も、逆CBのクバルシを経由して空いたスペースを利用する。
この、ロドリによる1stライン上で点を打つ位置取り、および中盤での数的優位を活用した攻撃は、スペイン代表でも頻繁に見られたプレーだ。
スペース、敵守備陣形の1stライン上に入りこむことでボールを受け、さらにスペースを生み出す。そして、味方を経由してそのスペースにボールを送り込む。味方を経由して、である。つまり、スペースを連鎖させ、味方同士を繋ぐ。ゆえにロドリは攻撃の中心となるのだ。まさにバロンドーラーにふさわしい、圧倒的な頭脳派プレイヤーである。
既に30歳とベテランの域に差し掛かっている彼のプレーは、今のうちに眼に焼き付けておく必要がある。


CLフェイエノールト戦の2得点目は、こうしたビルドアップの特徴がよく表れているシーンだ。敵の1stライン上で前向きにボールを保持するロドリがアデイェミに当てることで敵SHをアデイェミに引き付ける。アデイェミはクリステンセンへレイオフで預ける。クリステンセンはカンセロに預けて、前方に抜ける動きを見せる。この動きに敵CBが対応し、アデイェミがフリーとなった。
この時、IHのペドリは内側に移動し、敵の前線メンバーは後方のロドリを警戒したため、スペースが生まれた。アデイェミは前向きフリーの状態で、カットインから見事なコントロールシュートを沈めた。
敵SHはロドリを警戒したため平行を切ることができず、クリステンセンはロドリの存在により後方枚数が担保されるため、前進しやすい。
最終的にはアデイェミの素晴らしいコントロールシュートによるゴールとなったが、そこに至るまでの過程は、ここまでのバルセロナを象徴するかのようであった。

ロドリ不在であったラージョ戦は、相手のプレスに苦しむ時間帯も多かった。この試合のラージョは、2トップの一角がクリステンセンへのパスコースを遮断するような位置を取り、もう一方がアンカーのベルナルを切りながらクバルシに寄せていく。
そして、SBのクンデに出たところでSHが寄せに出て奪取を図るという仕組みであった。早々にサイドを限定することで、ボールサイドに圧縮し、中盤での数的不利を生じさせないラージョの狙いは素晴らしかった。
こうした時に、アンカーのベルナルは敵の1stDFの判断を狂わせるように、敵守備陣形の1stラインに働きかける動きは少なかった。基本的に、敵のFWと中盤のライン間の位置取りを維持する形を取った。

ただし、前方に抜ける動きで前進を助ける動きは見せた。絞ったクンデからヤマルにボールが入ると、前方に抜けることでヤマルのカットインルートを生み出す。

また、クバルシからのボールをレイオフでペドリに落とし、中央へと抜けることで、ペドリのドリブルによる前進ルートを生み出すといった形だ。

その他、前進したベルナルに敵CHがつくことで、オルモへのアプローチがかかりにくくなる。彼がヤマルの手前のスペースに流れることで、フリーの状態が生み出される。その先では、中盤に降りて顔を出し、CBを釣り出したラフィーニャが背後に抜け出す連携が図られた。
ただし、こうしたベルナルの動きは、1stDFの判断自体は乱せていない。つまり、DF陣は前向きフリーを享受できているわけではない。そのため、ロドリのように安定して前向きフリーの選手を生み出すようなケースは少なかった。

ロドリであれば、クンデに対して平行かそれより少し後方まで下がった低い位置でサポートを入れるだろう。敵CFに、クバルシとロドリのどちらを見るかという判断を迫り、空いた方を活用してボールを逃がす。ロドリの代わりにアンカー位置に降りるペドリも同様に、クリステンセンとの2択を突き付け、逆サイドに逃がす。
この試合ではベルナル以上に、ペドリによる1stDFの判断を乱すプレーが見られた。そして、彼にはドリブルという武器がある。ドリブルで1stラインを突破し、味方に預けるという技術力の高さを活かしたプレーは、チームにオプションをもたらしている。
前方で囮となるか、後方で味方を活かすか。ベルナルとロドリでは、サポートの高さが異なる。それぞれの特色とそれに伴う機能性の違いが表れていた。
ファイナルサード攻略
バルセロナの前線には、得点を奪う能力に秀でたラフィーニャとヤマルが起用される。バルセロナにとって、彼らの能力を最大化することは、得点力の増加につながる。
リーガ7節終了時点で、ラフィーニャは12得点3アシスト。昨季のCFレヴァンドフスキの14ゴールを早くも抜きそうなハイペースだ。
彼は、スピードを活かした背後への抜け出しと、切れ味抜群のシュートフェイクによって数多くのゴールを生み出している。
ラフィーニャは得点だけでなく、敵CH周辺に降りてパス交換にも参加する。彼の動きに対して敵CHがスライドして対応すれば、空いたハーフスペースで味方がボールを受けることができる。

ラージョ戦では、こういったライン間での連携によって得点が生まれている。クリステンセンが運んで相手を引きつけ、脇のペドリから楔を打ち込ませる。ハイハーフに移動していたエスパルトがCBを引き付けつつワンタッチでラフィーニャに送り込むと、前向きでCBと1vs1の状態ができあがる。得意のシュートフェイクで抜き去り、ゴールネットに突き刺した。
敵CH周りに選手を配置することで、CHの担当エリアが広くなる。すると、チャンネルへのランニング等に対して、CBが対応に出ざるを得ない。すると、ゴール前でCBが1枚の状況が生まれる。ラフィーニャが仕掛けるためのスペースの完成である。

敵CBが前進して対応すれば、その脇のSBはカバーポジションを取るために立ち位置を内側に調整する。すると、サイドのヤマルやゴードンといったWGは、より広いスペースを確保することができる。
敵SBの絞りが甘ければ、ヤマルやフェルミン、もしくはスピードあるラフィーニャ自身がCB裏を取る動きを見せる。

ヤマルがワイドで受ける場合、クンデは相手のサポート選手の背後を抜けるようにインナーラップでサポートを行い、攻撃に幅を持たせる。相手がクンデに釣られると、カットインからゴールを脅かす。
ヤマルもここまで7得点4アシストの活躍で、リーグ戦の得点の6割が、ヤマルとラフィーニャの2人から生まれている。
ヤマルに限らず、ハーフスペースからのクロスは攻撃の選択肢の一つとなる。この攻撃は、大柄なCFを必要とせず、後述する安定したネガティブ・トランジションを迎えることのできるものとなっているが、頻度自体はそう多くない。
プレッシング戦術
ここまでのバルセロナは、どの試合も圧倒的なポゼッション率で試合を進めている。そのため、守備ブロックを敷くような展開はここまでほとんど見られない。攻撃局面とトランジションで完結し、守備局面は省略されている状況だ。
ただし、プレッシングの機会はしばしば見られる。

プレッシングは、相手の選択肢を制限することで、奪いどころを定める。
プレッシングのトリガーのひとつはサイドでのバックパスだ。相手がバックステップで広がってサポートポジションを取るよりも早く、前向きにプレスをかける。
まずは、縦を切ることで、相手にバックパスを強いる。バックパスに合わせてボールサイドのWGやラフィーニャがプレスをかける。

CBからGKへのパスに対しては基本的にラフィーニャがワンサイドカットで制限し、逆サイドのWGはCBとSBの間を切ることができる位置を取る。中盤はマンマーク対応だ。前を向かせないことが重要で、バックパスを強いれば、先ほどプレスをかけた前線の選手が再度プレス、もしくは制限をかけることができる。サイドに出てくる場合、SBが敵SBの位置までプレスをかけ、CBがサイド裏のケアを行う。
また、ゴールキックの時も必ずプレスをかける。大まかな役割は同様だ。
こうしてロングボールを蹴らせての奪還、もしくは中盤ラインでの奪取と速攻を狙っていく。

こういったバルセロナのプレスに対して、フェイエノールトは、ボールコントロールに秀でたIHのヴァレンテがWGの手前に流れることでマークを外す巧みな回避の意図を見せた。マークの受け渡しが発生する中で、アンカーに寄せるペドリは、逆への展開を抑えるようなコース取りで攻撃を封じるプレーをこなした。この試合以外にもそういったプレーが散見される。
こうしたプレッシングにおいて特に重要となっているのが、CFのラフィーニャだ。スピードあるラフィーニャは、横切りプレスの質も非常に高い。守備への貢献が高い中で、攻撃時に見せるシュートフェイントの切れ味は鈍らず、鋭さを保っている。攻守においてキーマンとなっている。
ネガティブ・トランジション
バルセロナのネガティブ・トランジションは、一定の機能性を見せている。しかし、スペイン代表のサッカーと比較した時に最も大きな違いを見せるのがこの部分であり、懸念が残る。
サッカーという競技は、攻撃の回数に比例して、ネガティブ・トランジション局面の発生数が増加する。ボールを保持するチームにとってこの局面の強化は必要不可欠となっている。スペイン代表の強さの秘訣もこの部分であった。

これは、以前の記事で紹介した、スペイン代表の局面遷移の設計図だ。黄色い枠で示した箇所が、ネガティブ・トランジションに関わる部分だ。
この中で、バルセロナにとって大きな問題となっているのが、色付きで示した2点である。

まずはボールの失い方だ。これはカウンター対応を迎える前段階の話、攻撃手法の部分となる。例えば、シュートがゴールから逸れ、ゴールキックとなれば、プレーが中断されるためカウンターを食らうことはない。
バルセロナは、細かなパスワークを得意とする選手が多いがゆえに、狭いスペースで難しいパスをひっかけてカウンターを浴びるケースが多い。特にフェルミン、ペドリ、ヤマルはそういった傾向が強い。
美しい連携で崩しかけても、最後に1つミスを犯すだけで、大きな失点リスクが降りかかってくる。

スペイン代表は、フリーのボールホルダーから、背後に抜けるWGへのシンプルなロブパス攻撃を駆使していた。しかし、バルセロナはそういった攻撃がスペインと比べて少ない。攻撃手法の段階から差異が生まれているのだ。
そして、次は構造的な問題。後方に残るメンバーが2CBとアンカーのみというシーンが頻発している。SBが攻撃参加を行う中で、アタッカーを抑えられる選手を配置できなくなってしまっている。例えばエスパルトは、ボールロスト後に素早く切り替えてアタッカーの対応に戻ることができることが、魅力の一つとなっている。しかし、予防的配置を取っていないため、スピードあるアタッカーに対しては追い付くことは難しくなる。奪って二次攻撃に繋げるというよりも、どうにかカウンターを阻止するという意味合いでの対応である。
そのため、後方に2CBのみとなり、CBの脇を突かれるというシーンは決して少なくない。

また、カウンターを仕掛けあうオープンな展開となると、中盤に広大なスペースが生まれる。相手が前向きフリーであるにも関わらず、ハイラインという状態だ。こうなると、相手が助走をつけて背後に抜け、DFラインの突破を行うことが容易くなる。
DFラインが全力で戻ったとしても、中盤がついてこれなければ、マイナスクロスに対応できない。

ハイラインの背後に送り込まれるボールの処理というのは、対応が難しく、ミスが起きやすい。バウンドするボール等、球質によってはなおさらだ。ここまでの試合でもマルティンやクリステンセンにミスが見られている。
当然だが、ミスは少ないにこしたことはない。ミスが生まれにくい環境づくりも重要だ。この構造的な歪を背景として生まれるミスを、個人の責任とするか、組織的な課題として捉えるかといった点も、バルセロナの今後を左右するだろう。
好調の裏に潜む懸念点
ここまでのバルセロナの戦いにおいて、いくつかの懸念点が見られる。

まずは、先ほど取り上げたネガティブ・トランジションだ。強固な守備組織を誇り、スピードあるアタッカーを擁するチームに対し、現在の攻撃手法と予防的配置で、敵のカウンターを抑えられるのか、という点は最大の懸念点だ。
次に、ここまでいわゆる強豪と呼ばれるチームとの対戦が無いことから、様々な面で未知数であるという点だ。ネガティブ・トランジションの他、ハイプレスを仕掛けてくるチームにいかに対応するか、ボールを保持して試合を進められるか、ブロック守備は機能するか、等だ。
ロングボールに関してもここまでは機会が少ないが、相手のプレスを回避するような仕組みはまだ見られていない。プレッシングへと局面転換を図ることができるという機能性のみだ。
そして最後に選手層の問題。特に、出場時間の多いラフィーニャとヤマルで、チーム総得点の6割を稼いでいるという依存度だ。ラフィーニャに関してはプレッシングにおいてもキーマンとなっている。チームの高い目標を達成するためには、彼らの温存は不可欠だ。彼らをいかに温存しつつ、長いシーズンを過ごしていくかという、マネジメントは非常に重要となる。

バルセロナのような爆発的な攻撃力を誇るチームの戦い方、そして今後の活躍が期待される新進気鋭の若手指揮官達の戦術について、概要欄のリンクに記載された書籍でも数多く取り上げています。
アルテタに加えてアロンソ、イラオラ、マレスカ。
26-27シーズンでは、取り上げた監督の多くが新たにプレミア強豪チームに集結しており、新時代の到来を予感させます。
28人もの若手指揮官の戦術と、サッカーの原理・原則を学ぶことのできる一冊となっています。ぜひお手に取ってみてください。
ご視聴ありがとうございました。


