RBライプツィヒ vs ホッフェンハイム -中央制圧から派生したそれぞれの策略-

RBライプツィヒ vs ホッフェンハイム -中央制圧から派生したそれぞれの策略-

CL出場権争いも佳境に入り、ますます熱を帯びてきたブンデスリーガ第31節。今季CLでは共に苦い経験をしたRBライプツィヒ(以下RBL)とホッフェンハイムの一戦。

加速度的に強さを増すレッドブル・グループのサッカークラブ、ITを駆使した最先端のトレーニング施設、最年少監督ナーゲルスマンの登用…。最近話題に上がることの多い両チーム。だがそれはピッチ外に限った話ではない。ピッチの中、戦術面を見ても、現在のドイツを代表するクラブチームと言っても過言ではないだろう。この試合も戦術的駆け引きに富んだ好ゲームとなった。


スターティングメンバー

RBLはケイタ、カンプル、ポウルセン、ウパメカノといった面々がベンチスタート。また、普段の4-4-2ではなく4-2-3-1の布陣。トップ下にはフォルスベリを起用。
対するホッフェンハイムはほぼベストメンバーの5-3-2。ただ、ベストメンバーといえど今季のホッフェンハイムは昨季ほどの機能性を見せられていない。得点こそ重ねているが昨季と違い、個人技に頼った得点、偶発的に決まった得点が多く、再現性に乏しいのは不安材料である。(原因についてここでは簡単に紹介するに留めるが①ベースサイドの喪失②埋められなかったルディ退団の穴③3バックの距離間の変化、の3つだ。)

前半戦

試合は開始直後から中盤での激しいボールの奪い合いとなった。

RBLはSHを中央に寄せトップ下のフォルスベリをグリリッチュにあてる事で中盤の密度を高める。
ホッフェンハイムは中盤3枚の距離間を保ちつつ、アンカー脇のケアにHVを向かわせることで中央での奪い合いに対抗。
SHを中央に寄せる、HVをアンカー脇に前進させる。中央を制圧するための両チームの策に対し、それぞれが対抗策を打ち出していくという戦術的駆け引きが始まった。

ホッフェンハイムの策

SHを中央に寄せるRBLに対するホッフェンハイムの策は、WBの活用だ。

ホッフェンハイムのWBは基本的にそれほど高い位置をとらない。RBLのSBが「ケアに出るには若干遠いかな」と思わせるような高さに位置を取る。
中央に絞ったSHは位置的にホッフェンハイムの俊足WBに対応できない。仕方なく代わりにSBがケアに飛び出してくる形だ。そのSBが空けた裏のスペースを狙い撃つ。

つまりは、
①WBが空く→②SBを釣り出す→③SBの裏を狙うという3ステップだ。

また、ホッフェンハイムは①のステップにおいて2トップというシステム的特徴も活かしている。
基本的に守備陣はクロスボールに対して、ターゲット+1で守る。ホッフェンハイムはターゲットが2トップなので、RBLは2CB+逆SBの3枚で対応する。すると必然的に大外のWBには手が回らなくなるのだ。

※さらに詳しい解説は【ホッフェンハイム】ナーゲルスマンが魅せる5-3-2攻撃戦術の分析にて。

RBLの策

HVをアンカー脇まで前進させるホッフェンハイム。対するRBLの策は、そのHVの裏の狙い撃ちだ。

ホッフェンハイムの5バックにおいて、HVが前進してできたスペースはカバーされずにそのまま穴になる。CBのフォクトは元々CH出身で、カバーのためのポジション修正やマークの受け渡しの判断が鈍い。後手になってもギリギリ対応できるスピードがある分、そういった点がなかなか改善されないのだろう。WBもカバーの動きが中途半端であり、DFライン全体の統制がとれていない。
また、WBが背中をとられるシーンも多い。中盤3枚の対応が追い付かない際、DFライン5枚が横一線で待ち構えてしまう傾向がある。するとホルダーへのプレッシャーが一切かからず裏を取られてしまうのだ。
RBLはSHが絞ってプレーするため、HVが穴を空ければ即座に突ける体制が整っていた。

先制点

両チームとも策を携え試合を進めたが、次第に主導権を握るようになったのはRBLだった。ホッフェンハイムの中盤&2トップがボールの出所を制限できず、裏をとられる機会が増えていった。
RBLに足りなかったのは決定力のみ(思えば同じ系譜のシュミット・レバークーゼン、ツォルニガー・シュツットガルト等も同じく決定力不足に泣いていた)。
RBLが決定機を逸する中、先制点を奪ったのは劣勢のホッフェンハイムだった。

流れの中でFWグナブリーとWBシュルツが入れ替わっている状態。先述のホッフェンハイムの策に加え、この2人による2vs2、最小単位のユニット戦術が実を結んだ。
策通りSB手前のスペースで受けたグナブリーはドリブルで内に切り込む。この時、SHを背中に置くようにコースを取り、完全に排除。2vs2の局面を作り出した。

さらにそこから1タッチ内に切り込む。初めのマッチアップとしてはグナブリーvs SB、シュルツvs CBであったが、ドリブルの進路をCB方向に変更することでグナブリーvs CBの状態を作りだした。
これによりCBの視線はグナブリーに注がれ、シュルツがフリーの状態に。死角から背後を突きやすい状況を作り出したのだ。美しい2vs2ユニット戦術である。

試合を決めた3点目

2点目が決まったのは先制から20分後。ビルドアップのミスを逃さなかったホッフェンハイムがあっさりと追加点。
RBLの爆発的な攻撃力をもってすれば追いつけない点差ではなかったが、前半終了間際、試合を決定づける3点目が決まった。
1点目同様、ホッフェンハイムが終始狙い続けた形だ。

低く位置したWBシュルツがボールを受け前進。その際、グナブリーが外で張る事でSBをピン留め。シュルツの前進するスペースを確保した。
そこから降りてSBを釣り出しつつ受けるグナブリー。呼応するようにFWのウートがSB裏に侵入。最後は外から猛烈な勢いで入ってきたカデルジャーベク。
狙い通りの形で両WBが絡んだ見事な得点シーンだ。関わった全選手の動きに意図があり、迷いなく実行されていた。

後半戦

後半はどんな展開になるのだろう…!とワクワクしていたが、立ち上がりにまさかのフォルスベリ1発退場。前半からグリリッチュとのマッチアップに苛立つシーンはあった。フリーマン的にピッチを動き回っては噛みあわせを外し、好機を演出していたが、結果的に収支はマイナスになってしまった。
その後、途中出場したケイタの個人技とセットプレーで2点を返し底力を感じさせたものの、同じく2得点を奪い、保持率を高め試合のクローズにかかったホッフェンハイムに及ばず。密度の濃かった前半戦と打って変わってあっさりと幕を引いた。

5点目のシーン

5点目はオーバーラップを巧みに用いた得点だった。通常オーバーラップは、SBが縦に駆け上がってくるのが一般的だが、このシーンは中央に位置していたカデルジャーベクが外を回っている。スタート地点の違いだ。中央の選手が外を回る事でマークを攪乱できる(この時はそもそもマークがいなかったのであまり参考にならないが)。さらにホルダーのアミリは外を使う素振りをきちんと敵に見せる事で逆脚クロスを容易にし、ルップのバックドアを演出した。1つ1つのユニット戦術を丁寧に遂行している印象だ。

おわりに

後半戦はあっさりと終結してしまったが、前半戦の両チームの駆け引きは非常に見ごたえのあるものだった。まだまだ新興勢力といえるが、ナーゲルスマン、ハーゼンヒュットルに率いられる両軍はやはり戦術的に見るとトップクラスであると再確認できた。
両チームともCL・ELで経験値を蓄え、ブンデスリーガを引っ張る存在へと成長してほしい。

とんとん。