【いますぐ使える】2vs2攻撃戦術「ドリブルアット」とは?~標的を変えて裏を取る~

戦術用語解説

今回は2vs2の攻撃戦術「ドリブルアット」について紹介します。
そう複雑ではありませんが、効果は絶大。得点に直結するケースも多く、すぐにでも実践に移したい戦術です。

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ドリブルアットとは?

ドリブルアットは、本来バスケットボールでよく使われるワードだ。どういったプレーか、上の画像を用いて説明する。

まず、2vs2の状況。OF1 vs DF1、OF2 vs DF2がマッチアップしている。DF2は、OF2を見つつ、DF1のカバーに入れるような位置取りをするだろう。

この状況からボールホルダーのOF1は、DF2に向かってドリブル(正対)する。DF2の視線はOF1に向かうことになり、マッチアップの組み合わせはOF1 vs DF2に変わる。そこで死角となったOF2が裏に抜ける。この時、DF1がOF2に対応するカバーポジションをとれないというのもこのプレーにおける利点である。

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実践例

上が実践例である。一瞬で決定機を創り出すことができる便利な戦術だ。

★ナポリ:ハムシク&インシーニェ

★フランス代表:ムバッペ&パヴァール

★ビジャレアル:カスティジェホ&フォルナルス&バッカ

★アトレティコ:サウール&コレア

★ホッフェンハイム:グナブリー&シュルツ
ホッフェンハイム/RBライプツィヒ分析記事にも解説あり

★ナポリ:インシーニェ&ジエリンスキ&メルテンス

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長距離バックドアの補佐的効果

以前あげたバックドアに関する記事を合せて読んでみてほしい。その中で下記のような記載をした。

蹴る直前に右脚のアウトでボールを置き直しているのが分かりますでしょうか?
マーカー方向に身体を向けつつボールを蹴り脚側深くに置き直す事でマーカーはボールホルダーの次の動向に注目しなければなりません。そのためボールウォッチャーとなり、足が止まり、タイミングも外され、裏抜け役を見失います。また、角度的な余裕を作れると同時に、インフロントで柔らかいボールを出しやすくなるという利点もあります。
ボールを蹴り脚側深くに置き直す分1タッチ多くなりますが、この1タッチが上記のような複数の効果を持つのです。

この文章はナポリのバックドアを説明した時のものだ。ナポリのバックドアはこれまで説明したものとは違い、20~30m程離れた反対サイドのWGが行うプレーだ。つまりドリブルアットは、近距離(2~3m)・長距離(20~30m)のどちらでも効果を発揮するプレーである。このプレーを知っているか否かで、プレーの幅、精度が大きく変わってくると言える。

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2vs2をいかに創り出すか?

上のサンプルのビジャレアルの例に注目してほしい。フランス代表やホッフェンハイムの例のように明らかに2vs2の形が出来上がっている状況に対して、ビジャレアルの例は結果的に2vs2が生まれたともいえる流動的なものだ。

つまりバックドアを容易にするドリブルアットの意識さえ持っていれば、

・裏抜け役の選手はボールホルダーが正対している選手の裏に入るようにすることで、
・ボールホルダーは身体のアングルを変えて正対する選手を変更することで、

敵陣を崩すための餌を蒔くことができるというわけだ。

ビジャレアルの他にも例をみてみる。アーセナルでのムヒタリアンとエジルのプレーだ。

このエジルの動き出し。ホルダーの内ドリに合わせて逆ベクトル、反時計回りに移動。ナポリのバックドアみたいに綺麗。

これもビジャレアル同様、結果的に2vs2のような形となった例だ。これは、ドリブルアットの特性を活かして裏をとるため、エジルが2vs2の状態を自ら作りに行くようなオフザボールを見せている。

ボールを受ける選手がこのドリブルアットの特性を知っていれば、エジルのようにボールホルダーにパスの出し先を提供して助けることも、ライン間や背後で自分が楽にボールを受けることもできる。

次に、フランス代表グリーズマンとムバッペの例を見てみる。

こういうのもドリブルアットの派生だよなぁ。出し手(グリーズマン)の横ドリで、2vs2に近い状況を自ら作りに行く。2vs2が出来上がっていない状態でも、この概念を知っていれば受け手・出し手共に選択肢が広がる。

先程の例は、受け手のエジルが2vs2の状況を作りに行った形だが、今回は出し手のグリーズマンが2vs2を作りに行っている。ムバッペが遅れて意図に気づき、合わせに行っているのが分かる。

ちなみに、ビジャレアルの例もこちらだ。カスティジェホがアウトサイドで2度押し出す独特のステップでボディアングルを変えることで、敵陣を崩すための種をまいている。

このように出し手が受け手を、受け手が出し手を助けるために選択肢を与える動きとしても非常に有意義なプレーである。

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内へのドリブル

このドリブルアットにおいて必ず必要になるのが横方向の動き、「内へのドリブル」だ。サンプルのどのケースにおいても含まれている(身体のアングルを変えるだけでも効果あり)。以前キミッヒのプレー分析記事を挙げた際にその重要性を説いているが、アングルを変えて受渡しを外し、敵陣にスペースを創り出す上で非常に重要なスキルとなっている。WGの選手だけでなく、SBの選手が低い位置で敵ブロックを動かす際にも有効だ。上の記事のキミッヒだけでなく、ミランのリカルド・ロドリゲス、レアル・マドリードのマルセロ等にも見られる。

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おわりに

ドリブルアットは非常に強力な2vs2攻撃戦術だ。それほど複雑なスキルも要求されない。またこの強力な武器を活かすため、出し手・受け手がそれぞれ2vs2のような状況を作りに行くというプレーを選択肢のひとつとして持っていれば、崩しの際に非常に役に立つ。元々2vs2の状況ができていないと使えない、という限定的な戦術ではないのである。

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コメント

  1. […] まずは前提条件の破壊だ。中央を使わせないという前提が破壊され、WBが釘付けにされてしまうと、CH周辺や大外から簡単に破られてしまう。外での数的不利に対応できず、もしくは対応しようとしてバランスを崩すケースも多い。前編にて解説したポイントである。特に危険なのはWGのカットイン。カットインに対してWBがどこまでついていくか、どのタイミングでHVに受け渡すか、といった問題が出てくる。ここのタイミングを誤れば裏に入られてしまったり、プレッシャーがかからずミドルシュートや、ドリブルアットからの逆サイドバックドアを許したりと、様々なリスクにさらされることとなる。 […]

  2. […] エジガルの空けたスペースや自ら広げたチャンネルへ積極的に侵入していく。ティーラトンが配される左サイドよりもシンプルなプレーが求められ、マルコスとのドリブルアット+バックドアのコンビネーションなどで得点を重ねている。いくらスペースを広げても侵入できる選手がいなければ得点は生まれない。彼のように侵入できるウインガーは非常に貴重なのだ。そして逆もまた然り、遠藤のように広げられる選手がいなければ強引でメリハリのない攻撃に終始する。ティーラトンサイドにスペースを作れる遠藤を、逆サイドに1プレーで得点に絡める仲川を配する、合理的な人選となっている。 […]

  3. […] 上の動画のアザールは外に行くとみせかけてフロントカットを決めています。「ホルダーに寄る動き」はありませんが、逆に「ホルダーから離れる動き」で敵も予測線から引き離しつつ、身体の向きや視野を乱す事で優位に立っているのが分かります。その後のドリブルアットも見事です。 […]

  4. […] さらにそこから1タッチ内に切り込む。初めのマッチアップとしてはグナブリーvs SB、シュルツvs CBであったが、ドリブルの進路をCB方向に変更することでグナブリーvs CBの状態を作りだした。これによりCBの視線はグナブリーに注がれ、シュルツがフリーの状態に。死角から背後を突きやすい状況を作り出したのだ。美しい2vs2ユニット戦術である。 […]

  5. […] これに加わるもう一つの動きが背中を回る動きだ。イブラヒモビッチの背後を回ることで瞬間的に2vs1の局面を作り出し、敵のマークを攪乱する。原理としてはドリブルアットと同じである。これは特にレオンが得意とする動きであり、イブラヒモビッチの近くに位置をとっていなければできないプレーだ。 […]

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