【ロシアW杯】各国代表に学ぶカウンター戦術の要点~総括編~

2018ロシアW杯

前編・中編に渡り、各国代表のカウンターをサンプルに攻守両面におけるポイントを見てきました。この総括編の前に是非チェックしてみてください。

これまで挙げてきたカウンターの汎用的なポイントをまとめたものが下記になります。まずは攻撃面から。

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攻撃POINT

①2トップは敵の攻撃方向限定後、シームレスに同サイドのCHの背後もしくは外に流れる。
②ボール奪取後、敵のプレッシングを回避するためのショートパスを1本入れ、ボールの保持を安定させたうえで速攻をかける。
③FWに近い位置で、前を向いてレイオフを受けたCHからの縦パス
④ボールと人の待ち合わせ場所はボールサイドのハーフスペース
⑤WG+偽9番の2人でボールを収める
⑥最前線への楔でCBを釣り出す

カウンター攻撃は、被カウンターよりもチームの特徴が出る部分です。カウンターの起点をどこにするかは、自チームの守備ブロックの高さや敵チームの攻撃方法、それぞれのキャストにもよってきます。

ベルギーのように低いライン設定から前線の強力なタレントの力で押し切るカウンター。ロシアのように強力なタレントがいなくとも守備→攻撃をシームレスに行い、中盤ラインでのボール奪取から細かいパスを繋いでいくカウンター。メキシコのように敵のリスク管理の穴を突いていくカウンター。

つまりカウンター攻撃は自チームの守備・キャスト、敵の攻撃・リスク管理までを総合的に考慮して設計する必要があります。その上で上記のポイントのいくつかを抑えることが重要となってきます。

チームの色が出やすいカウンター。W杯の数試合だけでこれだけのポイントが見られたということは、クラブチームまで視野を広げて母数を増やせばさらに多くのポイントを発見することができるはずです。「引いてカウンター」と言っても様々な形があり、個人的にも今後さらに深堀りしていきたい部分です。

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守備POINT

①最終ライン3枚+手前にCH1枚。菱形での計4枚体制。
②綿密な受渡し・ポジションの確認。
③CBは横スライド。SBとアンカーによるポジションの入れ替え。
④味方選手の出入りに柔軟に対応し、基本陣形◇を崩さない。
⑤SBの背後はCBがカバー。SBは帰陣の際CHの位置へ。
⑥手前に残るCHは中央をプロテクト。サイドチェンジを許さない、もしくは遅らせる。
⑦敵の動きに惑わされないゾーンの意識
⑧ボールに対して壁を作るように撤退
⑨撤退の限界点(迎撃への切り替え)はランナーをオフサイドポジションに追いやったタイミング、もしくはペナルティエリア手前
⑩手数と時間のかかる、難易度の高いプレーを選択させる

被カウンター守備に関しては攻撃面と異なり、どのチームにも当てはまる汎用的なポイントが多くなっています。準備段階から時系列での表記となっており、基本的には準備→遅らせる&撤退→迎撃という流れとなります。この流れを滞りなく行うことが被カウンター対応のカギ=上記のポイントです。

これらのポイントをふまえて、最後にあのシーンを振り返って締めたいと思います。日本がロシアW杯で最後に喫したベルギー戦の3失点目です。

この場面の山口、後退すれば長友・長谷部とブロック作って水際作戦に持っていけただろうけど相手はカウンターの申し子デブルイネ先生。しかも山口がどうこうする前に長谷部がアザールに引っ張られて中央空洞化、香川が引っ張られて厳しい状態。守りようはあっても結局運頼みの域を脱しなかった

ベルギーは通常通り、ボールサイドのハーフスペースでデブルイネが受けるところから高速カウンターを開始します。この場面、ベルギーやブラジルであったらどう対処していたでしょうか。恐らく、山口・長谷部・長友で最終ラインを構築し、撤退。デブルイネを追走する香川らの援護を待ちつつ、一定の地点もしくは周囲のランナーの状況に応じて迎撃に転じるという上記ポイント記載の方法をとったでしょう。しかしこのシーンの山口の位置は迎撃地点としては高すぎる上、長友はルカクに完全に引きずられています。全く統制のとれていないラインと対応となってしまいました。
ただ、同じくベルギー戦のブラジルもCKからのカウンターに沈んでいます(中編参照)。DFリーダーが不在の状態でのカウンター対応の難しさは先述の通り。トップレベルのあのブラジルでさえ抑えることができなかったシチュエーション、非常に対応が難しい場面であったことは間違いありません。

この山口を中心とした対応に改善の余地があったことは間違いありませんが、さらに注目しなければならないのはリスク管理、準備の部分です。

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日本はアザール・ルカク対策に3枚を残していますが、デブルイネ含め数人がカウンターを仕掛けてくることは明らかだったはずです。仮にデブルイネだけがカウンターに転じたとしても3vs3。数的同数、個人能力で上回られ、被カウンターの組織力にも乏しい日本が3vs3程度の準備で良かったのでしょうか。被カウンターで計算できるスピーディなトランジションも持ち合わせていません。デブルイネが前を向いた状態でカウンターに走られた時点で非常に難しいシチュエーションになってしまいました。

ベルギーvsブラジル2点目の別角度。

ちなみにブラジルが喫した失点は、準備自体は悪くありませんでした。ブラジルも日本同様3枚残しですが、ショートコーナーをちらつかせていたコウチーニョが、ネイマールのCKと同時にハーフスペースまで絞り、セカンド回収&素早いトランジションに転じています。フェルナンジーニョもルカクに前を向かせない対応で時間を稼ぎ、人数的には問題のない状態で迎えています。

どこまでカウンターの対策を練るか。日本に限らずどのチームにおいても非常に重要なテーマです。

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おわりに

ロシアW杯各国代表に学ぶカウンターの要点シリーズはこれで最後になります。個人的に今回のW杯はカウンターの大会として非常に勉強になる大会であり、今後はクラブチームのカウンター戦術にも注目していこうと思っています。

非常に話題となったベルギー戦の3失点目については、「難しいシチュエーションだが、改善の余地はある。ただし、問題視するのは山口の対応以前に準備の部分」というのが私の意見です。きっちり準備をしていたブラジルが止められなかったものを、準備不足の日本が止められるとは到底思えません。課題も成果も見られた日本代表が今後どのように成長していくのか。継続的に見られたらなぁと思います。

また個人的には欧州の舞台で結果が出ないブンデスリーガ、代表でもGL敗退を喫したドイツを心配しています。勢い任せで安定感が無く、アンバランスなのは代表だけでなく、国内リーグの多くのクラブに当てはまります。CL・EL参戦チームの顔ぶれがコロコロ変わる事からも言える部分であり、非常に深刻な状態であるように感じます。
このまま堕ちていくのか、はたまた見事に立て直すのか。こちらも動向に注目です。

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サッカー戦術分析ブログ〜鳥の眼〜

コメント

  1. […] これは前シーズンの映像であるが、現在も踏襲されている。SBはビルドアップの段階でそれほど高い位置をとらないため、ボールを奪われた段階でDFラインに4枚全員が揃っているケースも多い。詳細はカウンターの記事をご覧いただくとして、4人がパスコースを塞ぎ距離を詰めつつ撤退し、最終段階で確実にシュートブロックに入ることで決定的なシュートに持ち込ませないよう冷静に対応している。プレッシング同様こちらも非常に見事な守備であるが、やはり課題がある。 […]

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