EURO2024開幕戦ドイツvsスコットランド。序盤から完全にドイツのペースで、前半のうちにドイツが3点を奪い、スコットランドには退場者が出たことで試合が決まった。
ということで今回は前半戦のみポイントとなった点を。
ハイライト
スタメン
ドイツの攻撃構造と司令塔・クロース
ドイツは守備時4-2-3-1、攻撃時は両SBが高めの位置を取りクロースが左に降りる3-1-6。 両SBは、敵WBが絞った場合に幅を使いに高い位置に入り、それ以外はやや低めの位置で釣り出すような立ち位置をとる。
対するスコットランドは5-4-1での守備。長い時間ドイツの攻撃局面となった。
ドイツのパス回しの中心はクロース。相手の誰が出てくるかを見極めてパスコースを選択。いつ出てくるかを見極めてリリースのタイミングを選択。彼の配球が前線にスペースと時間を与えた。
前線は2列目3枚とCFの計4枚が中央3レーンに入るオーバーロードを形成し、スコットランドの3CBに対して優位を築く。裏抜け役と降りて受ける役を作ることで、どちらか一方が空く。この試合の序盤は裏へのボールも多くなった。
さらには相手の中盤の隙間に入り顔を出すことで後方からのパスコースを作り出す。
4人とも狭いエリアでボールを捌くボールコントロールに長けたプレイヤーであるという個々の質の高さも、前進の効率をあげた。
彼らへのパスコースを遮るためにスコットランドはSHとWBが絞る。5バックでドイツの前線4枚を見るような形だ。すると大外のSBが空く。
先制点は相手を中央に引きつけ、クロースから大外SBのキミッヒにサイドチェンジ。ゴール前で裏をとりに行く選手の後ろで遅れてゴール前に入ってきたヴィルツがスペースを享受し、キミッヒからの並行パスをダイレクトで撃ち抜きネットを揺らした。
2点目はハフェルツの裏抜けでCBを押し下げ、ヴィルツとムシアラの手前のスペースに入り込んだギュンドアンがクロースの楔に対してターンを決めて中央を崩し切った。どちらも狙った通りの形であろう。
後方3-1の4枚であるためカウンターのリスクがあるが、キミッヒとミッテルシュタッドが上がりきる機会が少ないこと、前線メンバーによるロスト後のプレッシング、CHアンドリッヒによるアプローチとファウルの活用でカウンターが生まれる前に止め、安全を担保した。
30分過ぎ以降、スコットランドは11番クリスティーを上げた5-3-2に変化。右CFの10番アダムスにクロースを見させた。そこでクロースは
- 降りずに元のCHの位置に収まり、左サイドにスペースを作る(アダムスを引きつけて囮になる)
- 中央(CBやアンカー)に入り敵陣形を乱しつつ配球する
- 自身が降りた状態でCBターに2トップ間へのドライブを指示し、敵CFを絞らせて自身がフリーになる
といった形で攻撃に関与した。
ただし、それまでよりドイツは楔が入りにくくなった。スコットランドが5-4-1の時のドイツは常に1トップの脇で1列目を越えた状態でいられたが、5-3-2では1列目を越える難易度があがる。スコットランドの変化は明らかにドイツの攻撃を狂わせた。
とはいえ、3点目のPK獲得までの流れはクロースの思惑通りに左サイドにスペースを空け、そこに降りたムシアラが切り込んだところから生まれている。クロス精度の高いキミッヒをサイドに置いた利点も活きた。
ドイツの4-2-3-1守備
ドイツの守備局面を見てみる。彼らは4-2-3-1の陣形で、スコットランドの3-4-2-1の3バックに対して、中盤へのパスコースを切るように前線4枚が立ち位置をとった。特に2列目3枚は勤勉にスライドし、CHへのパスを許さなかった。WBに対しては SBが前進して見に行く。ハフェルツがCBへのバックパスを切れば、HVへのプレスではめ込みが完結した。
おわりに
ドイツが圧倒的に試合を支配し、強さを見せた試合。しかし、より強いチームを相手にクロースを抑えられたらどうなるのか?カウンター対策は十分なのか?という点で一抹の不安も残る。
逆に、今後のドイツの試合は相手チームによる「ドイツ対策」とそれに対する「ドイツの対応力」に注目するとより楽しめるだろう。