敵を置き去りにする「フロントカット」とは?~裏抜けに対する「表」の概念~

戦術用語解説

今回は「フロントカット」の紹介をしたいと思います。

皆さん「裏抜け」はご存知でしょうか?敵DFの背後を抜ける、以前紹介したバックドアですね。ではこの裏抜けの「裏」に対する「表」とは何か?それこそが今回紹介するフロントカットのポイントになります。

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フロントカットとは?

冒頭で触れた「裏」抜けに対する「表」とは何か?

「裏」は敵の背後(死角)、敵DFの背中側になります。
対して「表」は敵DFの目の前、視野の中になります。
そして、元々バスケットボール用語である「フロントカット」とは、この「表(敵の目の前、視野の中)」を抜ける動きになります。「それじゃあ敵のマークを外せないから使えないじゃん!」と思われるかもしれませんが、それは大間違い。大きなメリットが存在します。

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フロントカットのメリット

フロントカットは敵の死角を突けない反面オフサイドの心配が少なく、さらにパスの予測線に敵より早く到達できます。
(このパスの予測線というのは、フロントカットを行う選手のイメージの中にあります。つまりはパサーと息を合せる事でどこにでも変更が利きます。)

パスの予測線に敵より早く到達できるということはつまりパスカットの心配がありません。パスコースと敵の間に自分の身体が入っている状態だからです。ということは、パスの予測線がゴールに向いていれば、敵DFの障害無くシュートに持ち込むことが可能という事です。サイドの選手が行えば、敵DFと入れ替わり、完全に置き去りにすることが可能です。これが最も大きなメリットであり、上の動画はこのメリットがハッキリと現れています。

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フロントカットのポイント

もう一度上のジョルディ・アルバの例を見返してみましょう。お手本のようなフロントカットです。このフロントカットのポイントは、前項の図にもありますが「パサーに寄る動き」です。パサーに寄るのは数歩でOK。当然ですがパスはパサーから出るわけなので、パサーに寄る=パスの予測線に近づく事を意味します。これは「予測線に敵DFより先に到達する」というフロントカットを成功させるのに直接的に関わってくる超重要ポイントです。

「パサーに寄る動き」に対して敵DFは足を止めてウォッチャーになるケースが多々あります。DFにとって裏をとられるのが一番怖いため、手前への数歩は緊張が緩みがちです。フロントカットの成功につながる重要要素であるこの数歩を見逃してくれるのなら、使わない手はありませんね。

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バックドアとの相乗効果

このフロントカットを手札に持つことで、バックドアが活きてきます。バックドアを警戒したらフロントカット。逆にフロントカットを警戒したらバックドア。表裏2つの選択肢を突き付ける事で敵は守りにくくなります。

上の動画のアザールは外に行くとみせかけてフロントカットを決めています。「ホルダーに寄る動き」はありませんが、逆に「ホルダーから離れる動き」で敵も予測線から引き離しつつ、身体の向きや視野を乱す事で優位に立っているのが分かります。その後のドリブルアットも見事です。

ナポリの例は分かりやすくボールホルダーに寄る事でDFとの入れ替わりを実現しています。バルセロナの例は寄る動きでフロントカットを匂わせた状態から、一気に背後を陥れています。このように「裏」だけでなく「表」を選択肢に持つことでDFを混乱させることが可能です。

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その他サンプル

その他の例を見てみましょう。

クロアチア代表・ブルサリコ

ぎりぎりまでボールホルダーに近づくことで敵DFを完全に置き去りにしています。その後はテキトークロスからヘッドショット。オチまで完璧です。

ブラジル代表・コウチーニョ

バルセロナのサイド攻撃の記事でも紹介したコウチーニョのオフ・ザ・ボール。キミッヒを置き去りにしています。本当ならパスコースは切れているはずですが、マルセロの絶妙な股抜き付き。ギュンドアンの咄嗟のカバーリングといい、ハイレベルな攻防です。

ナポリ・カジェホン

(31秒からのシーン)

バックドアが得意なカジェホンですが、このシーンではマーカーの「表側」を抜けています。2つの選択肢を持つ彼は非常に優秀なランニング技術の持ち主と言えるでしょう。

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おわりに

敵と入れ替わって置き去りにすることができるフロントカット。どのサンプルを見ても分かるかと思いますが、決まればDFは本当に抵抗の余地がありません。バックドアとの相乗効果も期待できるこの動きを取り入れることができれば、ボールを受ける際にDFに2択に対する躊躇いを生じさせ、優位に立つことができるでしょう。「裏」だけでなく「表」の選択肢を持つ。オフ・ザ・ボールは奥が深い・・・。

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サッカー戦術分析ブログ〜鳥の眼〜

コメント

  1. […] この配置によって距離感が短くなったことで、ワンツーにおけるランニングコースにも変化が生まれている。フロントカットのようなコース取りだ。壁役のボールホルダーに近寄るように抜けることで敵の介入を阻む。この動きを行うことで、同サイドで攻撃を完結させる力が増している。 […]

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