5-4-1守備ブロックの崩し方 ~現代サッカーにおける守備の新スタンダードと構造的弱点~

戦術分析

近年、5-4-1守備システムを採用するチームが増えている。

以前紹介した、連携を駆使して効率よく守るグラスナー率いるクリスタルパレスのようなチーム。

鋭いカウンターを繰り出す、セスク率いるコモのようなチーム。

そして、ゴール前にDFを集結させ、水際で強固な壁を作って粘り強く守るチーム。

様々なチームが採用し、様々な機能性を見せる5-4-1は、今や守備の新スタンダードと言えるまでに普及した。しかし、その攻略法はさほど浸透していない。

ここからは5-4-1守備ブロックに対する攻略方法、つまり十分なスペースと選択肢を保った状態で前進し、ゴールに迫っていく方法について論じていく。

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5-4-1守備システムの普及

5-4-1守備システムは、DFラインに5枚の選手を配置することで、ピッチの横幅68mを、数的不利に陥るリスクを低減しながら守ることが可能となる。

DFラインに生まれるギャップが小さくなり、最終的にはゴール前に人数をかけて守ることも可能だ。

ただし、5-4-1守備システムが採用される背景には、こうしたシステム的な特徴の他に、現代の戦術的潮流が影響している。

まずは攻撃時のシステムに目を向ける。現在、5レーンを活用し、配置的な優位性を持って攻撃するのに、最もバランスをとりやすいといえるシステムが「3-2-5」だ。

このシステムで攻撃を行うチームがそのまま守備に移行すれば、両翼を下げた5-4-1、もしくは5-2-3となる。

つまり、3-2-5攻撃システムの普及に伴い5-4-1、5-2-3で守備を行うチームも増えているということだ。

配置的な優位を活用しやすい3-2-5に対して守備を行う際、効果的な打ち手となるのが、ミラーゲーム化だ。

配置がガッチリと噛み合って配置的優位性の作りにくい状態だと、攻撃側としては前進が難しくなる。逆に守備側としては、配置的な優位を与えず、1stDFの判断遅れやミスが起きにくくなる。つまり、マークがはっきりして、ギャップが生まれにくいため、守りやすい。

そのため、3-2-5に対して、ミラーゲームを仕掛けるように5-4-1守備システムが採用されるのだ。

3-2-5という同一システムが増えたこと、そして3-2-5対策としてミラーゲームを仕掛けること。これらが戦術的潮流から見た、5-4-1増加の要因だ。

5-4-1はまさに守備システムにおける「新スタンダード」になりつつあると言える。

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狙うべきエリア

では、そんな新スタンダートとなりつつある5-4-1は、どのように崩すのが効果的か。

守備陣形を崩すうえで重要となるのは、ボールホルダーにプレスをかけにくいエリアを考慮し、誰がプレスに行くべきなのかという迷いを生み出すことだ。

それを踏まえて、5-4-1に対して狙うべきエリア・ポイントは図の通りだ。

①1トップ脇

1トップに対して2CBで優位性を作ることで、ボール保持を安定させ、前方にスペースを生み出すはじめの一歩となる。敵の中盤が前進して対応すれば、その背後にギャップが生まれる。

②アンカー位置

アンカーに対して、敵CHのうちどちらが前進して対応するかという迷いが生まれる。そして、前進したCHの背後にスペースができる。敵シャドーが絞ってアンカーへのパスコースを切れば、サイドが空く。

③大外レーン

大外レーンを守るWBに対し、2枚で数的優位とフリーを生み出す。脇のCBが出ると、DFラインにスペースが生まれ、SHが外に出ると中央にスペースが生まれる。

④HVの手前と背後

前進してCHの脇をケアするか、自身の背後をケアするかという、「一方しか塞げない二択」を迫っていく。1人でも可能だが、2選手で裏と手前を狙うと効率が良い。5枚が幅を守る(=薄く広がった)守備に対して、厚みで攻める。WBが絞って対応すれば幅を守れなくなるため、外が開きやすくなる。

前提として、狙うエリアと配置だけでは攻撃にならない。配置以上に重要となるのが、敵・味方の状況を材料として、どこにパスを出すのかというパス先の判断、パスの回し方だ。

配置を整えても、配球先を的確に判断できないと無意味となるため、配置で崩すための前提条件となる。

判断材料、パス回しの考え方、身体の向き等については書籍、もしくは今後の動画にて。

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各システムによる攻略方法

5-2-3攻略において有効なのが、4-2-4によるアプローチだ。

一言で表すと、レーンの共有だ。サイドレーンで2枚、中央3レーンを前線4枚で共有し、優位性を生み出す形となる。

まずはCFに対して2CBで優位を築き、ボール保持を安定させつつ、前方に運んでいく。

そこから先では、レーンを共有して配置的優位を生み出し、前進を図る。

サイド高い位置で、SHが敵WBを釘付けにする。そうすることで、敵WBが前進できない状態を作り出し、SBをフリーにする。SBが持ち運ぶ、もしくはWGにパスを出して中盤ラインを突破していく。

SBはタッチラインに張り付かずに数メートル絞った位置を取る。

そうすることで、SHが前を向いてボールを受けられる角度ができる。

守備側としては、ボールホルダーとマークを同一視野に入れておきたい。

SBもSHも張っているのであれば、WBは労せずに2人を同一視野に捉えられる。

しかし、SBがやや内側に位置をとることで、敵WBは、2人を同一視野に捉えるために絞る必要がある。

すると、SHとの距離が開くため、SHの足元にパスが入りやすい。

敵WBがSHとの距離を詰め、ラインを高く維持する場合、死角を突き、フリーのボールホルダーから裏を突いていく。

敵WBがラインを下げて、SBとSHを同一視野に捉える場合、手前のスペースにSHが絞り降りることで、ライン間で前向きフリーとなる。

SBがフリーとなるのを嫌って、敵SHがサイドに出てくると、ハーフスペースが空く形となる。

CFがHVを釘付けにすることで、SHがその手前のハーフスペースに絞っていく。CFの釘付けによりHVが前進できないため、SHはCH脇でフリーになることができる。レーンをまたぐ斜めの動きを入れるとより効果的だ。

CHは、楔のパスラインを遮断してしまわないよう、中央に寄ってパスコースを作る。

SBは、相手のSHを外に引き付けるよう、開いた位置にポジションを取る。

敵WBが絞ってSHに対応する場合、SBがオーバーラップして幅を使う。

敵WBが前から潰しに前進してくる場合は、脇のCBがカバーしなければならないエリアがより広くなる。

SBまでボールが渡った場合でも、CFとSHがレーンを共有し、SHが斜め後方に降りることでスペースを得ることができる。

配球役となるCBがボールを運び、前線の味方が動き出す時間を作ることができなければ、こうした攻撃は実現できない。冒頭でも述べた通り、そういったパス回しにおける原則は確実にこなせている前提での配置論となる。

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3-2-5による攻略方法

次に3-2-5による攻略方法だ。そのままだとミラーゲームで噛み合ってしまうため、ポジションに変化をつける。特に有効となるのが、22-23シーズンのペップ・グアルディオラ率いるマンチェスター・シティが得意とした、変則型3バック、3.5バックである。

まずはCHが降りることで、敵CFに対して2vs1の優位を作る。この時のCHは、DFラインに降りるというよりも、相手のCFのライン、もしくはCFとシャドーの間に降りる形となる。自分たちベースではなく、相手ベース。すると相手は、CHが前進するかSHが絞るかでしか対応できない。両脇のCBはサイド方向に広がり、パスコースを作る。

CH2枚をケアするために敵CHが前進すると、その背後にスペースが生まれる。

スペースに降りて受けるシャドーは、一度サイドに膨らんで受けることで、敵DFのマークを外しやすくなり、かつ、中央の味方の方向を向いてプレーできる。

逆に、CFの方向に膨らむ場合も、敵CBはCFのマークで前進できないため、マークを外しやすい。

逆サイドのシャドーがレーンをまたぐように斜めに寄ることで、マークを外す。CFは、楔を受けるシャドーに食いついて空いたスペースに流れつつ背後を取る。

こうして、敵の守備の1stラインに降りるCHの動きから始まる、スペースの連鎖を発生させることが可能となる。

各選手が斜めの立ち位置をとることによって、ボールがピッチの中央をジグザグに進んでいるのが分かるだろう。

最初に戻って、仮にCHに対してSHが寄せに出た場合を考える。この場合、脇のCBが空いたスペースで前進していく。この時の脇CBには、運ぶ、抜ける等、積極的な攻撃への関与が求められ、ファイナルサードに顔を出すことも許容されるべきだ。

シャドーがサイドに流れることでフリーを得るのも有効な手段となる。大外の選手が敵WBを釘付けにすることで、その手前に流れ降り、攻撃を組み立てていく。内側に持ち出すことで、相手の身体の向きが入れ替わり、死角に入ったWGが裏に抜け出しやすくなる。

そのまま中に移動することで、マークを外してフリーでゴール前に侵入していくことも可能だ。

シャドーとWGが横ワンツーからレーンチェンジを行い、WGが中央の空いたスペースに侵入するのも、似た機能性のプレーとなる。

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3-3-4による攻略方法

次に3-3-4だ。

3バックvs3トップで噛み合う形とはなるが、アンカーを加えたうえで3バックが深さをとること、WBがサイドでパスコースを作ることでプレスにはまらないようにサポートする。特にCBとアンカーによる敵CFに対する数的優位の確立は重要だ。CBが深さをとらなければアンカーとの距離が近づき、位置的優位性が消えてしまう。

そして、強みとなるのが中盤での数的優位だ。IHが敵CHの脇にポジションをとることでフリーとなり、パスコースを生み出していく。IHがそのままサイドに寄ることで、大外レーンで優位性を生み出すことが可能だ。

CH間が空けば、2トップの一角が顔を出す。この時、2トップでレーンを共有することで、敵CBは前進してケアすることが難しくなる。

脇のCBが相手のSHを釣り出し、WBとの距離を広げることで、カットインで内側に展開しやすい状況ができあがり、攻撃の幅が広がっていく。

これを嫌い、敵SHが寄せに出るのを躊躇するようであれば、DFライン背後へのロブパスを狙う。WGが敵WBの眼前を横切るように背後に抜け、IHや残りの前線のメンバーでセカンド回収を狙う。DFとしては、ボールホルダーにプレッシャーのかからない状態で背後を狙われ、下がりながらの難しい対応を強いられることとなる。

IHがサイドに寄ることで優位性を得られるのは先述の通り。WGの手前ではなく、敵WBの背後に抜ける動きを見せることで、相手に別のリアクションを起こさせることができる。

敵の中盤がついてくれば、CFへのパスコースが生まれ、中央への展開が可能となり、レーンチェンジを交えた流動的な攻撃が生まれる。

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ファイナルサード

これまで見てきた5-4-1崩しは、ビルドアップの段階からファイナルサードに差し掛かるまでの形であった。

では、5-4-1で自陣深くに構える守備や、フィニッシュ局面に関しては、いかに攻略、アプローチを図るか?

まずは、オーバーラップとカットインの組み合わせでの攻撃だ。インナーラップの場合、敵SHや脇のCBによって対応されやすい。しかし、オーバーラップを行う場合、敵WBに対して数的優位を生み出しやすい。WBの挙動に合わせて、オーバーラップしてきた選手を使うか、カットインで中央への侵入を図るかを判断してゴールに迫る。

カットインに伴い、横ワンツーで中央へと侵入するパターンも効果的だ。日本代表のWB堂安律は、こういった楔を得意としており、横ワンツーに関しては、バイエルン・ミュンヘンがよく見せる連携だ。

また、WGにボールが入った際の、敵SHのサポートポジションを利用する攻め方も効果的である。SHがサポートポジションに入ると、ハーフスペース低い位置へのアプローチに時間がかかることとなる。

サイドからのバックパスで、敵DFがラインアップに動く瞬間に背後へクロスを上げる攻撃が定石だ。DFラインはボールとマーカーを同一視野に入れることが難しく、かつ下がりながらのクリアを強いられる。

このGKとDFの間に送り込むクロスは、高さ以上にタイミングやスピードの勝負となることが多い。また、ゴール前で前後の構造づくりを行うことで、前の選手が敵DFを釘付けにし、後ろの選手にフリーを提供することも可能だ。2026FIFAワールドカップ準決勝、アルゼンチンvsイングランドにおいて、屈強なイングランドのDFラインに対し、長身の選手の居ないアルゼンチンがクロスボールから多くのチャンスを生み出したのは、こういった要因によるものである。

後ろ向きでの守備対応となるDF側としては、クリアに力が入りにくい難しい体勢での対応を強いられる。そのため逆サイドでセカンドボール回収、および被カウンター対応要因を配置することで、守備陣形が乱れたところで二次攻撃をスタートする。もしくは攻撃に転じさせずに攻撃機会を増加させることが可能となる。

これらが、ファイナルサード攻略の有効な手段となる。

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別アングルからの攻略

堅い5-4-1守備システムを構築するチームに対し、いかに戦うか。戦いの目標はあくまでも勝つこと。つまり、崩さなくても点が取れて、勝つことができればいいのだ。

そういった観点から捉えると、守備組織を構築する前や、乱れを突くのが重要となる。例えば、先述のセカンドボール回収からの速攻等だ。

・クリアの難しいシチュエーションや、押し込んだ状態を強いることで、守備を再構築する前の乱れを突いていく。

・攻守問わずにセットプレー時、守備を構築する前のインプレーへの切り替えを狙う。

こういった構築前の局面での勝負に持ち込む他、ロングボールやプレッシングを用いてオープンな展開に持ち込み、守備陣形を構築する前に攻守が完結するトランジション勝負に持ち込む等、相手を土俵から引きずり下ろすようなアプローチも、攻守がシームレスに繋がる現代サッカーにおいては必要な考え方である。

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おわりに

どの守備システムにおいても、1stDFの判断の難しい、苦手とする攻撃手法やシステムが存在する。3-2-5という攻撃システムは、オーソドックスな守備システムともいえる4-4-2に対して効果的な側面がある。

オーソドックスな4-4-2を崩すための3-2-5が主流となれば、冒頭に紹介した要因で5-4-1守備が増加する。5-4-1守備が増えれば、その攻略策が発明、普及されるのがフットボール史の流れとして自然だ。

当然、同じシステムと言えどプレス開始位置や奪いどころの設定に応じて得手不得手は変わってくるため、一概に言うことはできない。

現在では4-4-2守備のSHが脇のCBに対して外切りのプレスをかけることで、3-2-5に対するマイナス面を払拭するケースも見られている。

近年多くのチームが採用している5-4-1システムによる守備。これに対する有効な攻略方法についてみてきた。4-2-4、3-3-4に加え、3-2-5のミラーとなった際の打開策は、どれも実例を元にしたものである。

「5バックを崩せない」というチームは多い。5トップに対して敵5バックが噛み合うからだ。そんな時にいかに状況を打開するのか?手段は1vs1で上回るだけではない。配置の工夫で状況を変化させることも可能なのである。

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5バックの崩し方、その他システムの崩し方、その他流行や普遍的な戦術の原理等については、概要欄のリンクに記載された書籍にて。

アルテタに加えてアロンソ、イラオラ、マレスカ。

26-27シーズンでは、取り上げた監督の多くが新たにプレミア上位チームに集結しており、新時代の到来を予感させます。

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