何故強い?台風の目?ディーン・スミス率いるアストン・ヴィラ戦術分析

戦術分析

圧巻はリヴァプール戦であった。今期も優勝候補筆頭であるディフェンディングチャンピオンに対し、7-2という驚愕のスコアで圧勝したのがディーン・スミス率いるアストン・ヴィラだ。今夏約7,000万ポンドの大金を使ってワトキンス、バートランド・トラオレ、マルティネス、キャッシュ、バークリー(ローン)といった面々を補強し、充実した戦力を整えた彼らは、7節を終えて1試合未消化ながら勝ち点12で首位と4ポイント差につけている。

今季台風の目となる可能性を秘めた彼らの戦術にフォーカスする。

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基本布陣

システムは、4-2-3-1およびトップ下が位置を移動した4-3-3を併用するような形だ。

GKにはアーセナルから加入したマルティネス。前進守備での貢献が求められるSBは、右にここまでプレミアでもトップクラスのタックル・インターセプト数を誇るキャッシュ、左にターゲット。CBは183cmとCBにしては小柄ながら空中戦に強く出足の良い23歳コンサ、安定した守備を披露するミングスが入る。

中盤は潰し屋タイプのドウグラス・ルイスと、左脚のキックでチャンスメイクもこなすマッギンがコンビを組む。右にはバランスのとれたアタッカー・トレゼゲ、左には圧倒的なチャンスクリエイト力を見せるグリーリッシュが配置される。

トップ下(もしくはIH)にはチェルシーからローンで加入しているバークリー、トップにはリヴァプール戦でハットトリックを達成した、スピードのあるワトキンスが入る。

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チームのスタイル

ディーン・スミス率いるアストン・ヴィラはセカンドボールの回収に無類の強さを発揮する

スローインやゴールキックの際は逆SBまでもが圧縮をかけて密集エリアを作り出し、セカンドボールを回収する。回収したボールはワトキンスやグリーリッシュに預けてショートカウンターを仕掛ける。攻守ともにそういったシチュエーションを作り出し、自らの土俵に持ち込んで勝負していくのが彼らのスタイルだ。

ビルドアップについても、セカンド回収のための密集を作り出せる準備さえできていれば、無理せずシンプルに前線やサイドにロングボールを送り込み、セカンドを回収して前進する。

この攻撃に変化をつけるのがこのチーム最高のタレント、グリーリッシュの仕事となる。

セット守備においてはセンターサークルの先端からのプレス、前線から仕掛けるプレスと2パターン用意されており、どちらもSBまでが積極的に前進してボール奪取を狙っていくが、回避される明らかなパターンが見られる。

セット守備

アストン・ヴィラの守備は4-2-2-2と4-1-4-1の2パターンあるが、どちらも狙いは同じだ(今回は4-2-2-2パターンで紹介)。

中央の楔を切るようにワイドの選手が絞り、外に誘導して奪い取る。タッチラインに沿うようなSB→WGへの縦パスに対してSBがプレスをかけてマイボールにする。右SBのキャッシュがプレミア随一のタックル・インターセプト数を記録しているのも、彼の能力だけでなくそういったチームの仕組みも影響している。

ただし、彼らの守備には明確な課題がある。それはプレス開始位置のばらつきによる、中央とSH-SB間の空洞化だ。

中央とSB-SH間が空洞化すると、SB→WGというパスを誘導しても余裕が生まれてしまう。WGから中央(アンカーやIH)へのパスを決めやすくなるのだ。2CHだけでは埋めきれないスペースとなる。GKから直接WGのいるエリアへロブパスを送ることも可能となってしまう。

的確にポジションをとって攻撃を組み立てるレスターには苦戦し、大きく広がってのサイド攻撃を得意とするリーズには0-3で敗北を喫した。

この状況となってしまったアストン・ヴィラはSBのキャッシュやターゲットの前進、ミングスやコンサを中心とした残りのDFラインメンバーのスライドにて危険なゾーンを消しつつ、シュートブロックにて回避するように後退して対応する。このミングス、コンサの対応力とDFラインの組織力は光る部分である。

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トランジション

チームのスタイルの項で触れたが、アストン・ヴィラは攻守においてセカンドボールの獲得を得意としており、低い位置からの組み立ての局面でもセカンド回収の準備ができればロングボールを送り込む。

そのため、攻撃→守備、守備→攻撃のトランジション時のポジション取り人数のかけ方は似通っている部分もある。

上の得点シーンではサイドに人数をかけたうえでロングボールを前線に送り込んだところから最終的にセカンドボールを回収してゴールを奪っている。これはボールを安定して保持している局面から始まった流れだ。WGのトレゼゲがセカンド回収に適したポジションに移動し、マッギンやキャッシュもポジションを移している。

マッギンとドウグラス・ルイスのコンビはセカンド回収のおいて無類の強さを誇る。タフでセカンドボールの発生地点に吸い寄せられるように移動していく。さらに前者はそこからの展開力にも長けており、チームの中心と呼ぶにふさわしい存在だ。

セカンドボールを回収したのちに仕事をこなすのはワトキンスとグリーリッシュだ。上図の場面ではグリーリッシュが予め敵の背後をとれるポジションに移動して、セカンド回収後の攻撃の展開を助けている。彼らの「中から外」、「外から中」への動きがトランジションでボールを獲得したのちのポイントとなる。

グリーリッシュとワトキンス主体でセカンド回収後の攻撃が展開されるが、彼らに連動するようにマッギンやバークリーといった中盤の選手が抜け出しを図る。主体となる2人が動いて空いたスペースを活用できる選手がいることが、アストン・ヴィラの速攻に厚みがある理由だ。

グリーリッシュに関しては、パスコースを切る立ち位置で守備を行うケースが多い。つまり彼の牽制が利いて切ったエリアにパスが出ず、かつ味方がボールを奪取した場合、即座にフリーになれるということだ。これもグリーリッシュが起点となれるポイントのひとつだ。

ワトキンスは斜めの動き出しを得意とする。ニアサイドに抜けるパラレラと、ファーサイドに流れるジャゴナウを駆使し、ここまでは得点よりもデコイで目立っている。敵の守備陣にスペースを作り出し、そこを味方に使わせる動きだ。シュート技術は高いものの、起点としてボールを受けた際、決定機演出直前のプレーでは引っ掛けてしまうシーンも多く、ここのパス精度が向上すればワンランクアップするであろう存在だ。

スローイン・ゴールキックの際の圧縮の凄まじさも特徴だ。逆SBまでもがセンターまで絞ってセカンド回収を目指す。敵も絞って対応すれば逆サイドや裏への抜け出しでチャンスを演出でき、敵が絞らなければセカンド回収の可能性が増す。

リヴァプールにはスローイン専門コーチが存在し、CLを制したバイエルン・ミュンヘンもスローインの際のプレッシングに力を注いでいた。今後スローインがさらに重要視されていく可能性も高い。

グリーリッシュ主体の攻撃

遅攻において変化をつけるのはグリーリッシュだ。左SHに位置する彼がワイドで受けると、中央に向かって斜めにドリブルを開始する。敵陣が広く空いていればスピードに乗って切り裂き、それほどスペースがない状態であれば味方の押上げを待つため、そして敵を自分に引き付けてスペースを作るための「溜め」を作る

これに連動するようにマッギンやバークリー、ワトキンス等がパラレラ、中央での横パスの受け手を分担する。グリーリッシュの斜めのドリブルに対して、崩しのポイントとなるエリアを的確に抑えたサポート体制をとることで攻撃に充実した選択肢を持たせていく

またSBのターゲットが高い位置をとり、グリーリッシュをサイドで張る役割から解放させ、ハーフスペースでプレーさせるパターンも備える。この時のグリーリッシュはよりシンプルにボールを捌いてゲームを作っていく。

彼ほどのレベルでこの役割をこなせる選手はプレミア全体を見ても少ないだろう。それほど彼のキープ力、パス出しのタイミングは優れている。

おわりに

ディーン・スミス率いるアストン・ヴィラは、統制されたDFライン、タフな中盤、攻撃を完結する力のある前線と、各所に特徴を持っている。中でも軸となるのは中盤を中心としたセカンドボールの回収であり、試合を重ねて消耗するほど強みが消える可能性も高い。そんな中でいかにして勝ち点を積んでいくのか、ディーン・スミスの手腕が問われる部分である。

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