渡邉晋&ロベルト・デ・ゼルビのサッスオーロ式攻撃戦術・4-4-2守備攻略法

戦術分析

ロベルト・デ・ゼルビ率いるサッスオーロが好調だ。

7試合を終えて15pt(セリエA2位)、得点数は18と、抜群の攻撃力を誇る。圧巻だったのは第6節。2-0で勝利したナポリ戦だ。

通常は4-2-3-1を採用するサッスオーロだが、この日は3-4-3を採用。4-4-2のナポリに対して流麗なビルドアップで奪いどころを与えなかった。

この日の彼らの3-4-3はまさに4-4-2守備ブロック破壊の教科書と呼ぶに近しい出来であった。今回はロベルト・デ・ゼルビ率いるサッスオーロ攻撃戦術について、ナポリ戦の4-4-2守備ブロック破壊に絞って分析する。

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布陣

ナポリ戦の布陣は3-4-3。

巧みなボールコントロールとアジリティが持ち味のマキシ・ロペスと、より静的にボールを捌くロカテッリの若手CHコンビがビルドアップの中心を担う。その他ボガやトラオレといった若手有望株、キリケシュ、アイハン、トリャン、オビアングといった比較的知名度高め(というより個人的に懐かしい・・?)の選手も揃う。

優位を取るポイント

4-4-2守備ブロックに対して3-4-3を用いるとこのような形となる。ここで優位をとることのできるポイントをひとつずつ見ていく。

【1】3バック(+2CH)vs2トップ

敵の2トップに対して、3バックを当てることで一人フリーの選手を確保してパスを回すことができる。ここで、HVは開きすぎないというのが優位性を保つうえでのポイントだ。ハーフスペースに立つことで外、内の選択肢を確保し、離れすぎないことでDFラインでのパス交換も円滑となる。

敵の2トップがカバーシャドウでDF間のパスコースを切りながら寄せてきた場合、CHを経由することでパスコースを確保する。

【2】HV+WB vs SH

①におけるDFラインでのパス交換で敵の2トップの守備をはがす。そうするとHVは自由にボールを持つことができる。この時にHVは必ずWBと敵SHの位置を見ておく。敵SHがHVに寄せればWBがフリーに、WBを警戒すればHVがフリーとなる。

【3】WB+シャドー vs SH

②の状況で、SHがHVを捨てて引いて構える場合、WBを見るかシャドーを見るかという選択肢を迫られる。HVは空いた方にパスを出して前進する。

【4】WB+シャドー vs SB

②の状況でSHがHVもしくは内側をケアした場合、WBへとボールが渡る。WBへとボールが渡った際(もしくは渡る直前)、外をケアする役目のSBはWBかシャドーのどちらを見るかという選択肢を迫られる。

この②、③、④においてポイントとなるのがWBの位置取りの高さだ。

低い位置にいればHVと協力して敵SHに対して確実な優位を作れるうえ、SBを釣り出すことができる。高い位置をとればSBの意識を外側に向けさせるため、シャドーに楔を打ち込める可能性が上がり、WBにボールが入れば早い展開でクロスまで持ち込むこともできる。逆サイドのWBも高い位置を取っていればクロスはより有効となる。

このように、どういったチャンスを演出していくのかという点にかかわってくる。

そしてここに限らずもう一点重要となるのが、敵を動かす餌となるパスだ。

例えば、HV→WBへとパスを出すだけで敵はSHかSBが持ち場を離れて大きく動いてケアを行う必要がある。HV→WBへのパスに対してSBが食いつき、かつSHの視線もそちらに移るため、シンプルにHVに戻せばシャドーへのパスコースが開ける。

こういった餌となるパス、そしてシンプルなリターンパスをチームの共通意識として持つことは非常に重要な意味を持ってくる。

ボールを動かせば敵は勝手に動くため、活用するに越したことはない。無駄なリターンパスに見えるかもしれないが十分な意味を持つ。むしろ、リターンパスにこそ効果があるといっても過言ではない。ボールをこまめに動かさないことはもったいないことのだ。

シャドーへのパスという3手先を見越した餌のパスを出せるパサーは真の司令塔と言えるだろう。チームとして配置を意識したうえで細かい餌のパスを量産できるチームの代表例が、サッリ・ナポリであった。

【5】2CH+シャドー vs 2CH

敵の2CHに対して、前進して2CHを見るか、後ろで構えてシャドーをケアするかという判断を迫る。ここでポイントとなるのは角度。HV→シャドー、HV→CHへのパスの角度が小さく、ほぼ一直線上となってしまうと、敵CHは一人で対処できてしまう。角度をつけるようにCH、シャドー、そしてボールの出し手のHVも位置取りを調整する必要がある。

2シャドー+CF vs 2CB

2CBに対して3人での数的優位を作り出す。ここで敵CHが低い位置で構える、SBが絞って対応する、等の策を講じてくればそれぞれCH、大外のWBに時間とスペースが与えられる形となる。

以上のような形で、ピッチの至る所に優位性を作り出して前進するのが3-4-3システムによる4-4-2攻略法だ。

ナポリの対応と弱点

ナポリの対応として最も効果的であったのは、サッスオーロにゴールキックを蹴らせることであった。サッスオーロはゴールキックの際も蹴り出さずに繋いで前進を図る。この時のサッスオーロはバランスを保つため、CBのキリケシュをアンカーの位置に上げた2CB(4バック)へと変化する。このシステム的な優位性が失われた瞬間を狙ってハイプレスをかけることでボールを奪還。選手のレベルでは上を行くナポリがシュートで攻撃を完結させ、ゴールキックをハイプレスで再び襲うというサイクルを作り上げた。

先日戦術分析記事を上げたアストン・ヴィラではスローインを取り上げたが、こういったセットプレーやプレーが切れてからのリスタートの重要性は高くなっていくのだろう。

ナポリの対応に限らず、この3-4-3というシステムにおける最大のポイントは、アタッキングサードでの人数のかけ方、フィニッシュへの持ち込み方だ。

整然とした選手配置は敵の4-4-2を崩すには的確な並びとなっているが、その分選手間の距離は開きがちでポジションチェンジは生まれにくく、ビルドアップに人数をかけるためファイナルサードで人数不足に陥るチームが非常に多い

実際この日のサッスオーロに関してもシュート数で言えばナポリの約1/3の8本程度。このファイナルサード以降の攻め方を整理するのがこのシステムを機能させるうえでのポイントとなる。

これに関してはどこかで良い意味での歪を生み出すのも効果的だ。

例えばCFが中央を離れてシャドーに近寄ってプレーする(レイオフや3オンラインの活用)、HVがサイドから攻撃に参加する、CHの1枚が前進するといった形だ。当然周囲のメンバーがバランスをとる必要がある。

チームの色が出る部分と3-4-3運用のポイントとしては
①優位性を意識したポジショニング
②敵を動かす餌を意識したパス回し
③アタッキングサードでのデザイン
となる。

4-4-2側のチームとしては配置上主導権を握られてしまうことの方が多いだろう。そのようなときは思い切って3-4-3のミラーゲームを仕掛けるのも一つの手段と言える。

おわりに

4-4-2守備ブロックに対して3-4-3は非常に優位をとりやすいシステムとなっている。当然選手一人一人が優位性を意識したポジションをとる必要がある。

また、このシステムを採用するうえで、どこでスイッチを入れてどのようにファイナルサードでの攻撃を完結させるかを検討する必要がある。ビルドアップに力を入れすぎて敵のゴール前に辿り着くころには火力不足となってしまっては意味がない。そういった状態に陥りやすいのもこのシステムの特徴なのだ。

丁寧にパスをつないで組み立てることのできるサッスオーロがこの先どういったサッカーを繰り広げるのか、上位をキープできるのか、そしてそもそもメインとなっている4-2-3-1にも注目していく必要がありそうだ。

※この記事で解説した点は元ベガルタ仙台の渡邉晋監督の著書「ポジショナルフットボール実践論」内にある「1人で2人を困らせる」というコンセプトに通ずるところが多いです。こちらの本は、日本最高のJ1という舞台で渡邉監督が試行錯誤した実体験やその経緯が綴られたおすすめの書籍なのでぜひご覧ください!

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おそらく似たようなサッカーをしていたんだろうなぁと思います。

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