【戦術分析】ドイツ代表はなぜ敗れ去ったのか?【2026FIFAワールドカップ】

戦術分析

2026FIFAワールドカップ。過去4回の優勝を誇るドイツ代表は、GLを首位で突破したものの、決勝トーナメント1回線でパラグアイにPK戦の末敗れた。

初戦でキュラソーに7-1で大勝したものの、その試合から既にチームとしてのバランスは乱れており、崩壊の足跡が確かに聞こえていた。

なぜドイツ代表は決勝トーナメント初戦で敗れ去ったのか。今回はドイツ代表の戦術と、彼らが抱える問題点から、早期敗退の原因を分析する。

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チームのスタイルとメンバー構成

2026FIFAワールドカップのドイツ代表は、4-2-3-1をベースとしたチームとなった。

攻撃時は左SBのブラウンがIHの位置に移動し、3-3-4のような配置に変化する。前線にテクニカルな選手を揃え、細かなパスワークやドリブルを多用して敵陣に迫っていく。

守備は4-2-3-1、もしくは右SHサネがDFラインに入る5-4-1のような形で相手を迎え撃った。

キミッヒを中盤ではなく右SBで起用し、代わりに中盤にはここ数年で新たに台頭してきたパブロビッチとヌメチャを配し、前線にはヴィルツとムシアラという2大スターを据えている。選手の質としては、決してベスト32で消えるチームではなかったが、サイドの人材不足、各局面での弱みが露呈した形となった。

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失われた2年間

2014年ブラジルワールドカップ以降、ドイツ代表は国際大会で結果を残せていない。ワールドカップに関しても、直近2回はいずれもGLで敗退、内容も充実しているとはいえないものであった。

そんな中、EURO2024は非常に質の高いサッカーを見せた。攻撃時、CHのクロースが左サイド後方に降り、中央にはテクニカルなハフェルツ、ギュンドアン、ヴィルツ等が並び、サイドにはキック精度の高いキミッヒとミッテルシュタットが配置された。

後方で相手を引き付け、サイドに広げ、中央で仕留める。長身のCFフュルクルクの高さというオプションまで備え、守備においては4-2-3-1で激しいプレッシングをかけて相手を追い込んだ。

層の薄いWGというポジションを用いることなく、サイドにはクロス精度の高い選手を配置し、中央の位置的優位、技術力、高さを活かして攻撃を繰り出すというEUROの戦い方は、非常に理にかなったものであった。

結果としてはベスト8で散ったものの、優勝したスペインと延長戦にもつれ込む互角の戦いを演じて見せた。

このサッカーをブラッシュアップしていけば、ワールドカップも期待できる。そう思ったファンも多かったはずだ。ドイツのサッカーに愛着のある私もその一人だ。しかし、2年の時を経たドイツが見せたのは、EUROとは全く別のサッカーであった。

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ドイツの問題点

W杯予選中のドイツは、初戦のスロバキア戦こそ落としたものの、その後は着実に勝ち点を積み重ね、本戦出場を果たしている。

しかし、本戦のドイツは攻撃面において大きな問題を露呈した。攻め急いでゴール前に辿り着く前にボールを失うケースが頻発する。詳細については後述するが、これは技術的なミスというよりも判断的なミスだ。

この攻撃局面における問題は、別局面にも問題を引き起こした。

ボールロスト時、相手が前向きの状態であれば、カウンターのリスクが高まる。低い位置やミドルサードでのボールロストの多いドイツは、多くの危険なカウンターへの対処を余儀なくされた。

また、攻撃局面の終わりは、守備局面の始まりを告げる。ドイツの守備ブロックは堅固とは言えない。サイドでの守備連携がなされないため、外から中へと侵入されるケースが多い。統制の取れていない守備ブロックでは、前向きに奪うことができず、カウンターにつなげることもできない。

このように、攻撃面の問題がネガティブ・トランジションの増加、難のある守備局面の増加という総合的な問題、質の低下へとつながり、厳しい戦いとなってしまった。

世界のフットボールは、各局面で強さを見せ、かつ各局面に相互作用を持たせることで、各局面を優位に戦うチームが増えている。そういったチーム設計でないと、勝つことは難しい時代となっている。

ドイツはまさにそのトレンドとは逆行している状態であったのだ。

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攻撃における3つの問題点

W杯で見せたドイツの攻撃は、まさに力技という言葉がふさわしいものであった。

力技といっても、相手陣地に蹴りこんで、肉弾戦を仕掛けるという意味ではない。ボールを無理やり、物理的な意味で前進させているだけ、という意味だ。

ドイツのように細かなパスワークを用いてボールを前進させる場合、当然ボールの通り道となるスペースを獲得する必要がある。相手の守備陣形を縦横に広げなければならない。複数の守備列を無理なく越えなければならない。

しかし、相手を引き付けることで前線の味方にスペースを与えるようなビルドアップが行われるケースがほとんどなかった。

相手を引き付ける、相手が釣られてこなければ運ぶ、そのうえで相手の守備列を越えていく。これはビルドアップの基本だ。

ビルドアップの停滞は、クロースのような司令塔不在が非常に大きく影響している部分でもある。キミッヒが3バックの一角に配置されたことで、クロースの役割の一端を担うことも期待されたが、相手を広げるようなパス回しを指揮することができなかった。

これにより、前線の味方が得られるスペースが小さくなった。ただし、後方のビルドアップだけに攻撃停滞の原因があったわけではない。

前線は、無謀な突破をひたすら繰り返した。

サイドのサネは、マークが2人ついていても突破を図る。パスを出す場合も、味方を活かすのではなく、自身が苦しくなった時の逃げ道としてのパスを出すのみだ。

ヴィルツとムシアラは、常に狭いパスルートを選択し、ミスを連発する。当然、ミスが増えるほど守備の機会が増え、攻撃機会が減る。

中央が狭ければサイドを利用すべきだが、サイドにはそもそも人がいないケースも多い。サネやヴィルツが頻繁に絞るのに加え、絞った後に代わりにサイドに出る選手がいないからだ。

中央に位置する選手の間でも、相手を困らせるような立ち位置をとる連携は見られない。背後と手前を同時に狙い、相手に判断を突きつけるといった、位置的優位がない状態だ。

つまり、相手を広げず、狭いエリアを無理やりこじ開けに行っているのだ。守備側からすれば、警戒して固めたエリアに、勝手にドイツがボールを運んできてくれるのだから、当然怖くない。

マークを受けている選手にも平気でパスを出すため、ミスが増え、試合は落ち着きのないものとなる。

いかにテクニカルな選手が多く、ヴィルツやムシアラのような才能あふれる選手が揃っていても、この攻撃志向では点が取れず、試合運びが上手くいかないのも当然だ。

ドイツの敗退は、システムうんぬん以前に、このプレー選択の判断基準に尽きる。これは、初戦となったキュラソー戦から継続的に見られる傾向である。

サッカーとは、「未来の局面」における「目標達成期待値」を最大化するための意思決定を、逐次的に行うスポーツである。

今大会のドイツは、次に来る局面を見据えたプレーが少なく、あまりに1つの手法に凝り固まったチームとなってしまった。根本的な部分であり、問題点は明らか。論じる余地が少ない。

極端なことを言えば、ヴォルテマーデやウンダフを前線に並べ、シンプルにゴール前にボールを送り届ける方が効率が良く、リスクの少ないものとなっただろう。

ブンデスリーガで躍進を見せる、ヘーネス監督率いるシュツットガルトの戦術や選手を中心に据えるパターンを見せても面白かったはずだ。

EURO2024で戦ったメンバーも多く残るため、踏襲路線も十分に考えられた。

様々な可能性を秘めたチームが、このような結果に終わってしまった反省を、次回のW杯で活かされるのを楽しみにしたい。

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機能性を示したシーン

位置的優位をほとんど用いることができず、機能性に乏しかったドイツ代表ではあるが、当然、見どころのあるシーンも生まれた。

例えばキュラソー戦では、ハフェルツとムシアラが縦関係を作り、相手の左CBを釣り出すことでIHのヌメチャが侵入するスペースを生み出していた。

コートジボワール戦では、左CBのシュロッターベックが敵WGのプレスを誘い、左WGのヴィルツが敵SBを釘付けにする。そうして空いたサイドのスペースをSBブラウンが利用するという位置的優位性が見られた。

エクアドル戦では似たような位置関係で、外切りでキミッヒへとプレスをかける敵の左SHの守備を利用し、IHのヌメチャがサイドでフリーになる状態を作り出すシーンが見られた。

しかし、効果的な立ち位置であったにもかかわらず再現性に乏しく、試合を優位に進める攻撃に昇華することはできなかった。

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慢性的な課題と4年後の希望

近年のドイツは、質の高いサイドプレイヤーが育っていない。WGは、カットインでゴールを陥れることのできる選手が少ない。ヴィルツのような、中央を本職とする選手を起用している状況だ。

SBの人材不足はさらに深刻で、現在の若手にも世界トップに成長しそうな目ぼしい選手は見当たらない。今回のドイツ代表も、本職CHのキミッヒをサイドで起用しており、右SBを本職とする選手がいない状態だ。

サイドのクオリティが下がれば、中央に密集して崩すサッカーとなるのも必然といえる。

そういった選手層の偏りを逆に利用した策が、EURO2024での、キミッヒとミッテルシュタットというキック精度の高い選手のサイド起用であった。

攻撃が上手くいかない時に、守備という別局面で勝負することができないのもドイツの弱みだ。戦い方の幅が狭く、局面間の相互作用が得られないサッカーは、淘汰される傾向にある。

また、中盤の底でゲームを作る役割を担うタイプの選手も少ない。クロースが一人で位置的優位と配球力を駆使してプレーするのに対し、パブロビッチやシュティーラーは現状、2人組での連携で輝くタイプだ。攻撃のテンポを調整するため、中盤の関係性や起用方法も検討する必要があるだろう。

今大会で、キミッヒ、ター、サネ、ニャブリといった世代の選手たちのワールドカップは実質終了となる。それぞれクラブレベルでは活躍が見られるだけに、代表での結果は非常に寂しいものとなってしまった。

ただし、次の世代は確実に頭角を現している。ヴィルツ、ムシアラを筆頭に、パブロビッチ、ヴォルテマーデ等、4年後に30歳を越えていないタレントは多い。今大会も、スタメンの半数以上が25歳以下の選手たちだ。

現時点では、やはりサイドの人材、特にSBが不足しているものの、4年後にはさらなる若手プレイヤーたちも頭角を現すはずだ。10年以上低迷するドイツの逆襲に期待したい。

EURO2024でのナーゲルスマン率いるドイツ代表、その他新進気鋭の若手指揮官達の戦術については、概要欄のリンクに記載された書籍にて。

26-27シーズンでは、取り上げた監督の多くが新たにプレミア上位チームに集結しており、新時代の到来を予感させます。

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