ユニット攻撃戦術「ヘドンド」とは?~スペースの「連鎖性」~

戦術用語解説

今回はユニット攻撃「ヘドンド」について紹介します。複数の選手が高速で連動してスペースを活用するこの戦術。決まれば綺麗に敵陣に穴を空けることができます。サッカーにおける「スペース」の重要性を考えると、知っておくべき戦術です。

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ヘドンドとは?

ヘドンド(Redondo)は英語で”round”、日本語で「丸い」という意味のスペイン語です。元々フットサルで用いられるローテーション攻撃ですのでまずはざっくりフットサルにおけるヘドンドの説明をします。

攻撃手AがDにパスを出し、全体はパスとは反対周りにローテーションします。この時ボールを受け取るDはAが居た方向にボールを運びつつ、楔を打ち込むタイミングを探ります。ここで敵陣に穴が空かなければ、穴が空くまでローテーションを繰り返します。

ピッチの広いサッカーにおいては3人で行われるケースが多くなっています。ローテーションを繰り返すことも稀です。楔の出し手となるCはスペースとタイミングを逃さないようボディアングルの調整に注意を払う必要があります。
この動きは「人とボールの循環」(形)よりも「スペースの連鎖性」(性質)がミソとなっています。そのため、循環の動き(形)ではなく連鎖性にフォーカスして話を進めていきます。

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スペースの「連鎖性」という性質

スペースには「連鎖性」という性質があります(持論)。
皆さんスライドパズルはご存知でしょうか?

スライディングブロックパズルとは、ケースの中に収められたコマを、空所を利用して動かし、目的の配置にするパズルの総称である。コマを滑らすように動かす(スライドさせる)事からこの名称がつけられている。スライドパズルとも呼ばれる。

出典:wikipedia

サッカーにおけるスペースの連鎖性はこのスライドパズルとよく似ています。このコマを選手として考えてみます。15番の選手が右サイドの空いているスペースに流れると、スペースは14番と15番の間に移ります(15番が元居たところですね)。このスペースに11番が降りてくると次は10番と12番の間(11番が元居た位置)に…。

これがスペースの連鎖性です。ヘドンドも同じで、選手Aが動いてできたスペースに選手Bが入っていく。選手Bが動いてできたスペースに選手Cが・・・という形で連鎖的に発生するスペースに次々と入っていく戦術となります。崩しの巧みなチームはどのチームもこの「連鎖性」という性質を活用しています。ボールを前進させる前にスペースを前進させることで崩しは楽になるからです。

この連鎖性は円状である必要はありません。というよりもむしろ円状である方が少ないです。

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実践例

実際にどのように機能するのかを見てみましょう。

HSV:ハント、伊藤達哉、サントス

以前投稿したHSVが最期に魅せた”4-4-2崩し”と伊藤達哉の現在地に記載有り。
→CHを押し込み、中央に大きなスペースを創出。

ベルギー:ルカク、アザール、フェライニ、デブルイネ

→敵の両CBを外に釣り出し、中央に大きなスペースを創出。

マンチェスターシティ:スターリング、ダビド・シルバ、ガブリエル、アグエロ

・ヘスス、シルバ、アグエロが全員反時計回りに旋回、敵7人が1ヶ所に集中
・アグエロのジャゴナウで敵左SHまで巻き込む
・最終的に浮いたウォーカーの弾丸ミドル

→ピッチ中央に敵を引き寄せ、ウォーカーにミドルシュートを叩きこむための時間とスペースを与える。

ビジャレアル:カスティジェホ、バカンブ、フォルナルス、マリオ・ガスパール

→マークの受け渡しのミスを誘発し、フリーの選手を作る。

その他:スペイン、モロッコ、スイス、ナポリ

どのケースもスペースの連鎖性を活かすため、「動いた選手が元々居た位置」に複数の選手が連続的に動き出しているのが見て取れます。スペースの創出と同時に、マークの受け渡しを乱すことに成功している点も注目すべきメリットです。

連鎖性に注目すると、次のシーンも興味深い動きとなっています。

マンチェスターシティ:シルバ、アグエロ、スターリング

3オンラインから抜けたシルバをトリガーにアグエロ、スターリングの順に連動してスペースに侵入。フリーの状態を作り出す。

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おわりに

以上がヘドンドおよびスペースの連鎖性の説明になります。ここまで挙げた例はどちらかというと「ヘドンドやろうぜ!」という意図的なものというよりは、スペースの「連鎖性」を活かすための個々人の動きが、結果的にヘドンドという形になったと言った方がふさわしいかもしれません。連鎖させる前、初めのスペースはたまたまできているものではなくシステムの噛み合わせ、降りる動きやパラレラセントラルウインガー的な動き等さまざまな形で創り出すことが可能です。

この連鎖性を理解すれば、サッカーを観る際・プレーする際に視野の広がったような、これまでとは違った感覚が味わえるはずです。

連鎖性を理解し、狙って連動することができれば崩しにおける強力なカードとなるでしょう。

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コメント

  1. […] ユニット攻撃戦術「ヘドンド」とは?~スペースの「連鎖性」~ […]

  2. […] 関連記事:ヘドンドとは? […]

  3. […] そんな彼らが片側のサイドにオーバーロードをかける際、ボールを持っていない最前線の選手(主に1トップのタディッチ)がサイドに流れるかライン間でボールを受けるところからスペースメイクの連鎖が開始される。外側に流れれば数的不利解消のためにDFラインは動かざるを得ず、ライン間に降りた際も同様である。 […]

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  6. […] WGは引きながら受ける事で敵SBを釣り出し、IHが裏に抜けるためのスペースを創る役目を果たす。ヘドンドのような形だ。またIHとSBが前進するため、WGが低い位置でリスク管理を行う必要があり、その面でも「引きながら」が活きている。 […]

  7. […] 右サイドのポジションチェンジにはヘドンドのような型が用いられる。 […]

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