【ロシアW杯】各国代表に学ぶカウンター戦術の要点~前編~

【ロシアW杯】各国代表に学ぶカウンター戦術の要点~前編~

フランスの優勝で幕を閉じたロシアワールドカップ。クロアチア・ロシアの躍進、日本の奮闘、ニュースター・ムバッペの爆発、ネイマールの七転八倒etc.様々な話題に溢れた楽しい大会になりましたね。

戦術面ではやはりクラブチームとは異なり時間が限られ、「寄せ集め」とも言えるナショナルチームでは凝ったチーム作りが難しく、今大会でも案の定遅攻やセット守備において戦術的魅力のあるチームはほとんど見られなかったというのが率直な感想です。

反面、高質のカウンターを繰り出すチームは少なくありませんでした。ドイツに完勝したメキシコの試合を機に、私の中でW杯はカウンター戦術の勉強の場と化しました(笑)。日本がコロンビアやベルギーから奪った得点、そして敗退に追い込まれた最後の失点はいずれもカウンター…。今こそカウンターについて考える良い機会です。今回はそんな各国のカウンター戦術について攻守両面から読み解いていこうと思います。

構成としては各試合のカウンター時のポイントをピックアップし、最後に総括として汎用的なポイントをまとめます。
それではここからは堅い口調で。いきます…。

※表記は(カウンターを仕掛ける側)vs(カウンターを受ける側)


ロシアvsクロアチア

ロシアの守備ブロックは今大会屈指の質を誇った。特にゾブニンとクズヤエフを中心とした中盤でのボール奪取は強力であった。秩序立った守備から繰り出すロシアのカウンターの特徴は下記の通り。

攻撃POINT

①2トップは敵の攻撃方向限定後、シームレスに同サイドのCHの背後もしくは外に流れる。
②外に流れる2トップと入れ替わる形で、SHが内に侵入する。
③ボール奪取後、敵のプレッシングを回避するためのショートパスを1本入れ、ボールの保持を安定させたうえで速攻をかける。

このカウンターにおいてキーとなったのは2トップの一角に入ったゴロヴィンだ。彼はフィジカルこそ強くないが機動力とテクニックに長け、①と③の受け手としてカウンターのリンク役を担った。短いパスを入れるには、当然選手間の距離が短くなくてはならない。献身的に守備をこなす彼の、「敵の攻撃方向限定→速攻」を、周囲と連携しながらシームレスにこなす動きはカウンター戦術の肝となった。彼のリンクなくしてロシアのカウンターは成立しなかったといえるだろう。

次は逆に守備目線。同シーンにおけるクロアチアの被カウンター対応を見ていく。
クロアチアのシステムは4-2-3-1。2CHにはラキティッチとモドリッチが入る形だ。クロアチアの被カウンター対応における原則は下記の通り。

守備POINT

①最終ライン3枚+手前にCH1枚。菱形での計4枚体制。
②手前に残るCHは中央をプロテクト。サイドチェンジを許さない、もしくは遅らせる。

クロアチアはSBとCHでの人数・バランス調整に長けている。①の陣形を保つよう、バランスを見ながらこの4人がポジションを調整することでカウンターのリスクを低減させる。またSB+2CBで最終3枚が構成される場合、その手前は1CHではなく2CHで中央のプロテクトを図っていた。

②においてキーとなったのはラキティッチ。彼は攻守の切り替えが早く、中央をプロテクトしつつサイドを限定するポジショニングが非常に巧みであった。モドリッチと2CHを形成して守る場合も、互いの位置を確認しつつ効果的な守備を見せた。CHに世界屈指のバランサーを複数擁するクロアチアの強みが出たと言える部分であった。

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フランスvsベルギー

フランスはグリーズマンが、ロシアのゴロヴィンに似た役割をこなす。

先に上げた攻撃POINT③の受け手となるのがグリーズマンだ。狭いスペースでプレーするのに必要なアジリティとテクニックを兼ね備えた彼が受けるエリアはCH周辺。プレスにくるCHを味方との細かなパス交換でいなして、カウンターに必要なスペースを創出しているのが分かる。人数をかけた厚みのあるカウンターを繰り出すうえで彼のリンクマンとしての動きがポイントとなった。

これに対して見事な守備で対応したのがベルギーだ。この試合のベルギーは4-2-3-1。ビルドアップ時は右SBを上げ、2CB+左SBで前進する形。

守備ポイント

①基本陣形は最終3枚+CH2枚(内1枚はプレッシャー要員)
②敵の動きに惑わされないゾーンの意識
③ボールに対して壁を作るように撤退
④撤退の限界点(迎撃への切り替え)はランナーをオフサイドポジションに追いやったタイミング、もしくはペナルティエリア手前
⑤手数と時間のかかる、難易度の高いプレーを選択させる

ベルギーもクロアチア同様、4~5枚を後方に残す。ベルギーの守備の特徴は手前のCHラインが突破された際の、最終3枚のゾーンの意識だ。ボールホルダーに対してはギリギリまで喰いつかずにCHに任せ、最終ラインは撤退。この時の撤退も敵についていくのではなく、ボールに対して壁を作るようなイメージで、敵に意識を向けるよりも味方との距離を詰めるように撤退する。そうすることで仮にCHがホルダーに追い付けずとも、作った壁でシュートを跳ね返せる。壁に穴が無ければ敵は外に展開する必要がある。敵になるべく手数と時間のかかる難しいプレーを選択させることで、失点のリスクを抑えることができるのだ。

ではどこまで撤退するか?まず基準となるのが、ホルダー以外の選手(ランナー)がオフサイドラインを越えた時。これは敵にパスという選択肢が無くなることを意味するため、撤退を止めボール奪取およびシュートブロックに切り替える絶好のタイミングとなる。上の動画が非常に分かりやすい例である。

次にペナルティエリアの数メートル手前。エリアに侵入されるとシュートの成功確率が高まるうえ、新たにPKのリスクが出てくる。最終防衛線がこのラインとなる。
上のシーンも、追走するデンベレによりムバッペの選択肢を消したうえでブロック形成→迎撃の流れで防ぎきって見せた。

フランスvsクロアチア

攻撃ポイント

①FWに近い位置で、前を向いてレイオフを受けたCHからの縦パス

フランスはグリーズマン活用の他、ムバッペを走らせるという必殺技を備えている。彼はクロアチア守備陣が形成する扉を開けるためのキーというよりも、扉ごと破壊するまさしく兵器のような存在である。

上の動画シーン①ではクロアチアのラキティッチとブロゾビッチが中央をプロテクト、後方には3枚が控えるベーシックな陣を敷く。それでも外から中へ抉り込んでいけるのがムバッペだ。その他、短いパス(レイオフ)によるボール保持の安定はどのシーンでも見られる。レイオフの出し手は2トップで、受け手&フィード役は3本全てCHのポグバだ。CHが押し込まれずに2トップの近くで前を向くことは、カウンターを円滑に行う上でポイントになった。

前編おわりに

今回はカウンター時の攻守の原則を忠実に守るチームとそのポイントを紹介しました。中編ではさらに組織的な連動を見せたチーム、プレイヤーの特徴というアレンジを加えたチーム、そして上手くいかなかったチームも紹介します。カウンター3部作ですが、次の中編がメインとなります。良し悪し両方のサンプルを見る事で理解が深まるはずです。