【東京五輪サッカー注目チーム】U-21欧州選手権を勝ち抜いた4チームの紹介

【東京五輪サッカー注目チーム】U-21欧州選手権を勝ち抜いた4チームの紹介

欧州若手プレイヤーの祭典、U-21欧州選手権。A・B・C各グループの首位と、2位で最も成績の良かったチームに準決勝進出の権利が与えられる。そして準決勝進出の4チームには、来たる2020年東京オリンピックへの出場権が与えられる。

今大会ベスト4に進出し、東京五輪出場権を手にしたのはドイツ、スペイン、フランス、ルーマニアの4チームだ。

U-21欧州選手権の出場資格は、生まれが1996/1/1以降の選手。東京五輪の出場資格は、生まれが1997/1/1以降の選手。そのため一部出場資格を失ってしまう選手もいるが、今回は最も熾烈な欧州の舞台を勝ち上がった4チームそれぞれの戦術的特徴を紹介する。

各チーム1年後には顔ぶれが変わり、採用する戦術が変わってくる可能性も決して低くない。それでも、最も競争の激しい欧州での戦いを勝ち抜いた猛者達がどのようなチームであったのかを知ることは、東京五輪を楽しむうえで、そして各国A代表の今後を先取りするうえで、価値あるものだといえるはずだ。


ベストゴール集

https://twitter.com/UEFAUnder21/status/1146806501899722752

ルーマニア代表~堅守速攻のダークホース~

戦績

vsクロアチア 4-1○
vsイングランド 4-2○
vsフランス 0-0△
グループC 1位通過
準決勝vsドイツ 2-4●

システム

監督

ミレル・ラドイ(ルーマニア・38歳)

キープレイヤー

アンドレイ・ラドゥ(GK/ジェノア)
デニス・マン(SH/FCSB)
ヤニス・ハジ(トップ下/ゲンク)
ジョージ・プスカシュ(CF/インテル)

戦術的特徴

堅実な4-4-2守備ブロックから、前線のタレントを活かした速攻

戦術分析

ルーマニアは4-4-2の守備ブロックを構築し、ボールを奪ったら手数をかけずに前線に送り込む速攻を売りとしている。

2トップはボールホルダー+アンカーにつき、サイドからの攻撃を強いる。敵SBに渡った際、SHはバイタルを切るように寄せ、縦に攻撃を誘導する。こうして敵が縦につけたところで、SBとCHが挟み込んで奪取する。

プレス開始位置を低く設定した場合、1列目のFWのラインと、2列目の中盤ラインの距離を狭める事でカバーシャドウがかかりやすくなり、アンカーのマークにつく役目が不要となる。その分中央のケアを弱めることの出来る2トップは、中央から距離をとった位置にベースポジションを置くことができる。敵からすれば「中央が使えず、サイドにも制限がかかった状態」となる。この時のルーマニアは、ボールサイドのCH、SH、SBで迎え撃ち、逆サイドの選手はそれほど絞らずにエネルギーの消耗を抑えることができる。

ルーマニアはこの2つの守備の使い分けが非常に巧みだ。これらを駆使してボールを奪ったら、手数をかけずに前線に送り込む。CFのプスカシュは中央でハイボールを収めることも、サイドに流れて収めることもできる万能タイプだ。また10番のハジはアジリティとテクニックを駆使して溜めを作り、SHの動き出しに合わせてピンポイントでパスを送り込むことができる。両利きであるため、一瞬のタイミングも逃さない。周囲の状況に応じてボールを収めるポイントに変化をつけ起点となるプスカシュとハジが、ルーマニアの速攻におけるキーマンとなっている。

遅攻の場合も、プレスを受けたら無理せず前線にロングボールを放り込む。4-4-2守備からの速攻を得意の型として持っているため、無理して繋ぐ必要もないのだ。

ショートパスからチャンスが生まれるとすれば、ハジがポジションをサイドに移すことで発生するスペースにSHのデニス・マンやアンドレイ・イヴァンが侵入するパターンである。

同じく4-4-2の守備ブロックを構築し粘り強く戦った2015年大会覇者・スウェーデンを思い起こさせる躍進であった。

東京五輪の年齢制限により、速攻戦術の肝であるプスカシュは出場資格を失う。オーバーエイジでの選出は十分に考えられるが、EURO2020予選で勝ち抜けばトップチームでも1トップを張る彼はEUROに参戦するだろう。これはハジも同様であり、戦い方が大きく変化する可能性がある。大きな懸念材料だ。

フランス代表~全面に押し出す「個の能力」~

戦績

vsイングランド 2-1○
vsクロアチア 1-0○
vsルーマニア 0-0△
グループB 2位通過
準決勝vsスペイン 1-4●

システム

監督

シルヴァン・リポイ(フランス・47歳)

キープレイヤー

イブラヒマ・コナテ(CB/RBライプツィヒ)
マテオ・ゲンドゥージ(IH/アーセナル)
マルクス・テュラム(WG/ギャンガン)
ジョナタン・イコネ(WG/リール)

戦術的特徴

サイドアタッカーの個人能力を活かしたシンプルな攻撃

戦術解説

フランス代表は4チームの中で、良く言えば最もシンプルで、悪く言えば最も特徴が薄い。守備ブロックは人数をかけ、攻撃はそれほど手数をかけずに前進していくが、組織的な特徴は強くない。反面、一人一人の個人能力が高い。守備ではRBライプツィヒのレギュラーコンビであるコナテとウパメカノを中心に粘り強く守り、中盤ではリヨンのアウアーとアーセナルのゲンドゥージがつなぎ役に。そしてパワフルなドリブルを得意とする、リリアン・テュラムの息子マルクス・テュラム、スピードとテクニックで敵を翻弄するジョナタン・イコネ等WG陣の突破でチャンスを作っていく。

シンプルな速攻で力を発揮するという点においてはルーマニアに近い部分があるが、組織と個人どちらに強みがあるかという点においては対照的だ。グループリーグで相見えた際は、IHのヌチャムを中心にボール保持からチャンスを作ろうとするフランスがルーマニアの組織的な守備の前に手を焼き0-0の引き分けに終わっている。

ドイツ代表~「偽9番」と「走力」のチーム~

戦績

vsデンマーク 3-1○
vsセルビア 6-1○
vsオーストリア 1-1△
グループB 1位通過
準決勝vsルーマニア 4-2○
決勝 vsスペイン 1-2●

システム

監督

ステファン・クンツ(ドイツ・56歳)

キープレイヤー

アレクサンダー・ニュベル(GK/シャルケ)
ヨナタン・ター(CB/レヴァークーゼン)
マフムド・ダフード(IH/ドルトムント)
ルカ・ヴァルトシュミット(CF/フライブルク)

戦術的特徴

0トップシステムとショートカウンター発動のためのトラップ

戦術分析

ドイツの攻撃面での特徴はヴァルトシュミットの0トップシステムだ。ヴァルトシュミットが最前線から敵のCH近辺まで降り、CBが釣り出されて空いたスペースにWGのエズトゥナリ、リヒター(アミリ)、IHのダフード、ノイハウスのいずれかが走り込む。

WGは幅を出すよりもCB背後を狙うプレーが求められる。より素早くCB裏をとるために、通常のWGがとる位置よりも絞った位置でプレーする。つまり、4-3-1-2のような形である。

WGの裏抜けで背後を取れなかった場合はSBのヘンリクスやクロスターマンが大外から抜け出しを図り、WGが外に流れるプレーを行った場合はIHが裏を狙う。CBのターからフィード1本でチャンスを迎えるシーンが多々見られたのはこういった仕組みのためである。

ヴァルトシュミットはライン間で受けるプレーを苦にせず、さらには小さいモーションから強烈な左脚のミドルシュートを放つことができる。オーストリア戦で魅せたゴールは今大会のベストゴールに選出されている。

そんな彼を中盤で野放しにはできないため、敵は多少スペースを空けてでもついていくのだ。そうしてできたスペースを突く、「走れる選手」が多くいたこともこのチームの特徴だ。上のシーンにおいても、左WGのリヒターがCB裏へ抜けるランニングを見せている。
チームの中でも特に運動量の多いIHのダフードも、このチームで一際輝きを放っていた。

守備面の特徴としては4-5-1の守備ブロックから仕掛ける、ショートカウンター発動のトラップが挙げられる。

横幅を中盤5人で守るシステムであるため、サイドのケアも行いやすい。WGはSBをカバーシャドウで消しつつ中央にボールを誘導するようにプレッシャーをかける。ヴァルトシュミットはCBに緩めのプレスをかけ、アンカーに出させる。IHのノイハウスが若干高い位置をとり、サイドチェンジの牽制を図る。こうしてヴァルトシュミットとノイハウスの間にボールを誘導したら、ダフードとエッゲシュタインは縦パスを警戒しつつ奪取のタイミングを窺い、WGの二人はサイドに出されないギリギリのポイントまで絞る。さらにノイハウスがボールホルダーにプレッシャーをかけ、ピッチ中央でボールホルダー包囲網を作り上げる。奪ったら人数をかけてショートカウンターを発動させる。ピッチ中央に仕掛けたこのトラップで多くのチャンスを演出してみせた。

ただしこの守備方法、王者スペインには通用しなかった。WGの2人が背後を気にしてプレッシャーをかけられず、IHが中途半端に出て空いた背後を突かれるシーンが多発した。WGがプレッシャーをかけられずに中盤5枚の守備が機能しないのは18/19シーズンのサッリ・チェルシーでもよく見られた現象だ。U21欧州選手権の新旧最優秀選手であるファビアン・ルイスとセバージョスの技巧派コンビが中央に構えていたとはいえ、畏縮しなければもう少し善戦していただろう。

スペイン代表~圧倒的な「技術」と「配置」のチーム~

戦績

vsイタリア 1-3●
vsベルギー 2-1○
vsポーランド 5-0○
グループA1位通過
準決勝vsフランス 4-1○
決勝 vsドイツ 2-1○

システム

監督

ルイス・デ・ラ・フエンテ
(スペイン・58歳)

キープレイヤー

フニオール・フィルポ(左SB/ベティス)
マルク・ロカ(CH/エスパニョール)
ファビアン・ルイス(CH/ナポリ)
ダニ・セバージョス(トップ下/レアル・マドリード)

戦術的特徴

10番セバージョスのポジショニングにより変化する、柔軟な配置バランス

戦術分析

圧倒的な力で欧州を制したスペイン。彼らの最大の特徴は選手の配置バランスである。そのキーマンとなるのがトップ下のセバージョス。最初期の攻撃では4-2-3-1の形を崩さずに攻撃を組み立てる。

SHの2人が幅をとる形だ。この形での攻撃が嵌るのであれば無駄なポジションチェンジは行わない。少し手詰まりとなった場合は、セバージョスが2CHの高さまで降りる。キープ力とパス回しに優れたセバージョスとファビアン・ルイス、彼ら二人に交じってそつなくパスを繋げるマルク・ロカで構成されるトライアングルによってピッチ中央でのボール保持が確立される。

この3人のパス交換のみで前進しゴール前に迫ることも可能であるが、難しい場合、セバージョスの降りる動きをトリガーに、空いた内側のスペースに両SHが絞り、SBが前進する。このポジションチェンジにより受渡しにミスが生じれば、中央のトライアングルは決して見逃さずにパスを供給する。

中央がタイミングを逸さずにパスを供給できるため、SHとSBが高い位置で重なるような位置関係をとるシーンも多々見られた。SHが絞った際に敵SBはついていくべきか否かを判断することがより難しくなる。

CHのファビアン・ルイスがDFラインに降りるパターンも少なくない。ただし、CB間ではなくCBの脇だ。その場合、セバージョスに加えてボールサイドのCFオヤルサバルも降りることで、中央での優位を絶やさない。代わりにボールサイドのSHは絞らず、高い位置をとる。

逆SHフォルナルスはハーフスペースで準備し、サイドチェンジのボールが来たらスピードのあるSBフィルポとの速攻で手数をかけずに崩す。

以上のように、初めからポジションチェンジを行うのではなく、ポジションチェンジを行う事により発生するスペースを突くために、さらなるポジションチェンジを行うのがこのチームの特徴だ。あくまでポジションチェンジは「スペースを作り、突くための手段」であり、「目的」ではない。当然のことのようだが、実はこれを確実に遂行できるチームは多くない。ポジションチェンジがあたかも「目的」かのように、機械的に配置を変えるチームの方が多く見られるくらいだ。その差が分かりやすく表れているのが、敵とスペースの状況に応じてポジションチェンジを行うという「タイミング」の部分であろう。

守備に目を移すと、ボールを失った瞬間中央のトライアングルが壁となる。マルク・ロカを中心に敵の攻撃を高い位置で即座に食い止める。前線の選手も戻りが早いため、トライアングルで遅らせることができればプレスバックとの挟撃にもっていけるのだ。

おわりに

U21欧州選手権2019は、圧倒的な強さを見せたスペインが優勝を飾った。ベスト4進出の顔ぶれを見ても分かるが、このレベルになると代表戦といえども、個人能力に加えてチームとしての完成度が高くなければ上位進出は難しくなる。堅実な4-4-2守備ブロックからの速攻を狙うルーマニア、それぞれ10番を中心に形を変えるドイツとスペイン。若手マニアの視点だけでなく、戦術的にも興味深い大会となった。

彼らがいかに東京五輪を戦うのか、そして彼らがいかにA代表を形作っていくのか、今から非常に楽しみである。