【コパ・アメリカ】日本代表が陥った「4-4-2のジレンマ」と修正策とは?-戦術分析

戦術分析

ブラジル開催のコパ・アメリカ2019に、カタールとともに招待国として参戦した我らが日本代表。初戦はチリに0-4と大敗を喫し、続くウルグアイ戦は2-2のドローと健闘した。多くの選手が代表デビューを果たし、それぞれに手ごたえを感じていることだろう。

そんな若手の博覧会のような様相となった今大会、選手個人としてではなく、チームとしてはどうであろうか。大敗したチリ戦と健闘したウルグアイ戦で大きく変わったのは4-4-2の守備の部分だ。

強豪とアウェイで対戦する数少ない機会、選手個人の裁量に任せる部分はあっても良いが、「チームとしての枠組みを設けない自由」は、「自由」ではなくて「無秩序」だ。枠組みがあるからこそ自由が生まれる。カオスなチリ戦のような試合のみで評価される選手は非常に不憫である。

そんな感想がこぼれるチリ戦から一転、ウルグアイ戦は4-4-2が機能したシーンが多々あった。プレス開始位置、選手同士の縦横の距離間など、チームとしての約束や狙いが見られた。

今回はチリ戦とウルグアイ戦での日本代表の守備の変化を紹介する。急造チームの4-4-2で陥りがちなジレンマと、ある程度の約束事を設けた4-4-2の違いを理解できるだろう。

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4-4-2の守備のポイント

4-4-2守備のポイントとなるのがアンカーの見方だ。
※以前投稿した伊藤達哉にフォーカスした戦術分析記事でも詳しく解説しています。

画像はリンクの記事で用いたものだが、この画像で言うシュタインマンの位置の選手をどのようにケアするかで、守備のバランスは大きく変化する。

2トップのラインと中盤のライン、どちらの選手が見に行くか・・・。アンカーをフリーにすれば攻撃の選択肢は大きく広がり、守備側としては的を絞り切れなくなる。どちらかのラインの選手が動けば、手薄になるエリアが発生すると言うジレンマだ。

4-4-2を採用するチームでもアンカーの見方は様々である。

例えば4-4-2の代表格、シメオネ監督のアトレティコ・マドリードの場合、2トップでカバーシャドウを駆使し、制限をかけながらプレッシングを行い、状況によっては逆CHの選手が前進する。

ラングニック監督のRBライプツィヒは、SHが高めの位置を取り六角形を形成し、FWのラインとMFのラインというライン間の概念を薄れさせる。

テンハーグ監督のアヤックスの場合、前線2人が縦関係を作り、トップ下のファンデベークがアンカーにピタリとつける(4-4-2というより4-2-3-1だが)。

マルセリーノ監督のバレンシアの場合、2トップのプレス開始位置と全体のブロックを低い位置に築き、FW-とMFのライン間を狭める。

日本代表がウルグアイ戦でとった方法として最も近いのは、この中で言うとマルセリーノ監督のバレンシア方式である。

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チリ戦の日本代表

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チリ戦の日本代表の守備イメージは上図のような形である。一言で言えば、何も決まりごとが無いのではないかという混沌とした状態。

久保と上田は早めにCBにプレッシングをかけるが、チリはサイドバックを経由することでアンカーへ簡単に入れられる。サイドバックに入った際、前田大然はバイタルエリアを切るような角度で寄せに行く。つまり、FWもSHもアンカーのケアをしないということである。アンカーを経由されると、守備に戻らない中島の背後へ展開されて苦しくなる。そのためCHの中山が敵のアンカー位置まで(ビダルがアンカー脇まで降りるシーンが多く、その場合はビダルの位置まで)前進し、柴崎が可能な限り逆サイドから絞って中山の背後をケアする形となる。

こうなるとチリのサイドバックのボセジュールはサンチェスへの縦パスを狙うことになる。サンチェスは真後ろからのパスを処理する必要があるため、前を向きにくい。それを見越してプレッシングをかける代表デビュー戦の原輝綺は、こういった場面でサンチェス相手に確実に仕事をこなしていたと言えるだろう。

ただ、柴崎・中山のCHコンビが同サイドに動く分、センターから逆ハーフスペース近辺には大きなスペースが生まれる。つまりFW-MF間に発生していたネックとなるスペースが、中盤のラインまで前進してしまうのだ。このようにスペースを前進させるというのは攻撃側にとっては理想のビルドアップだ。

前向き以外の守備を好まない中島は絞りも弱く、カバーには入らない。サンチェスが前を向くのではなく中央経由のパスのリンク役として振る舞うようになると日本は非常に難しい状況に陥った。

同様に、FW-MF間のスペースをひたすら突かれたのが2失点目だ。これはサンチェスがリンク役となっている。FW-MF間を空けた事でサイドチェンジを容易に許し、そこからチャンネルへの侵入で牽制、同サイドに両CHが流れた脇を突かれるという、原理としては上記と同じやられ方だ。

※チャンネル攻略については、アオアシ考察記事で詳しく取り上げています。
[nlink url=”https://birdseyefc.com/note/aoashi/”]

3失点目はラインの概念が破綻していた。2失点目同様、FW-MF間から容易にサイドチェンジを許し、連続的にチャンネルを狙うユニット攻撃の前に屈した。3人共、自分のパスの出し先と同じ方向に走ってのローテーション攻撃。日本でよく見られるのは底のパサーが固定されるタイプである。チリの場合、サイドチェンジを用いた時にこの攻撃がよく見られ、共通理解があるのか否か、興味深い部分でもあった。

上の動画も同様に、構造の欠陥とローテーションで崩されたシーンである。

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ウルグアイ戦の日本代表

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ウルグアイ戦はプレス開始位置がチリ戦よりも低く設定された。

岡崎と安部はCBへのプレッシャーを我慢し、トレイラ・ベンタンクールのCHコンビに照準を合せた。CBとSBの間に降りていく彼らに対しては横移動で対応し、プレスの高さはなるべく一定を保つ。

FWのプレス位置が低くなったため、中盤のラインとの間隔は狭くなった。上述、バレンシアの様なイメージだ。

CBからの楔はFWと中盤の2ラインをまたぐ形となる。そのため、ゴディンやヒメネスはリスクを考えると楔を打ち込みにくい。よって日本の中盤ラインは横の間隔を広めにとる。4-4-2同士システムが噛み合っていることもあり、SHの中島と三好はSBにアタックしやすい位置をとることができた。

ゴディン・ヒメネスは窮屈になり、簡単にロングボールを蹴るシーンが増えていった。

FW-MF間に入られた場合は、岡崎がプレスバックをかける。ここの判断がはっきりとしていたため、中盤は先ほどと打って変わって横の間隔をコンパクトに保ち、時間を作りつつパスカットを狙った。後ろ向きに守備をする岡崎と入れ替わるようにSHが速攻の先鋒となる。中島は後ろ向きの守備はほとんど行わないが、前を向いての守備であればそれなりに参加する。周囲の人選、戦術的配慮が必要である。彼のドリブル突破をチームに取り入れるメリットと天秤にかけての起用判断が必要であろう。

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おわりに

チリとウルグアイではシステムが違うため、同じ物差しで測ることは出来ない。ただ、間違いなく守備の狙いや意図は変化していたであろう。

選手個々人に自由を与えるのは良いとしても、「戦術的なタスクをこなす力」はテストしないのだろうか、と毎度のように思う。ウルグアイ戦のように一定の枠組みを与えた中で自由を謳歌できる選手こそ、評価に値する選手なのではないだろうか。

例によって今回もほとんど知らない選手だったわけだが、個人的に面白いと思ったのは安部。

それから大学生ストライカーの上田は、数ある決定機のうち1本でも決めていれば評価がガラッと変わったのだろう、という印象。動き出しの質が高く、安部と同じく個人的には良い印象が残った。

チリで言うとやはりビダル。それからアンカーを務めたボローニャのプルガル。


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