「アオアシ」から学ぶ、”司令塔型サイドバック”の可能性と”チャンネル”の攻略
- 2018.08.09
- 雑記

オフシーズンなので、おまけ的なライトな話でも。
という事で、皆さん。マンガ大国日本において「サッカーはマンガから入りました!」という人も少なくないのではないでしょうか。私もホイッスル、キャプ翼、ハングリーハート、イレブン、シュート、オフサイド、エリアの騎士等々、色々な作品を読んできました。
今回は、現在ビッグ・コミック・スピリッツにて連載中の「アオアシ」の紹介と、それに絡めて「チャンネル」の攻略についてのお話です。
アオアシの魅力
アオアシは、田舎から飛び出し名門ユースチームの門を叩き、ストライカーとしてプロ入りすることを夢見る葦人(あしと)君が、敏腕監督に能力を見込まれ花開いていくという物語です。
私の中でこの作品は好きなサッカー漫画ランキング1、2を争う名作です。特に好感が持てるのが、サッカーで最も重要な「スペース」の概念がしっかりしていること。必殺技が無くリアルに近い、「試合中に何を意識すべきか・何を考えながらプレーすべきか」がプレイヤー目線で描かれている勉強になる作品です。
司令塔型サイドバックについて
以前、司令塔型サイドバック、ヨシュア・キミッヒの「見る力」とは?という記事を書きました。
この記事では、サイドバックというポジションにいながら司令塔としての役割を担い、ワールドカップで大敗したドイツ代表の中でも幾度となくチャンスメイクを重ねた彼のポテンシャルの高さと、司令塔型サイドバックの可能性について分析しています。
アオアシの主人公である葦人は、今(最新13巻)現在、まさにこのポジションで才能を開花しようとしています。現代サッカーの傾向を取り入れ、それを主人公の視点で掘り下げていく。ストーリーの面白さはもちろんですが、このような勉強になる要素が多いのが、アオアシの特徴の一つです。
参考になる戦術描画
アオアシは、戦術面の描画が細かく、現実のサッカーでも参考にできるようなシーンがたくさんあります。例として、2巻のセレクションでの得点シーンと11巻
の武蔵野戦での得点シーンにフォーカスしてみたいと思います。
2巻セレクション
①左のハーフスペースで受けた葦人がサイドに運んでDF陣を左に引き寄せる。
②そこから一気にサイドチェンジ。逆サイドで待つ橘へ。
この時、葦人サイドに寄っていたDFラインのうち、SBだけが急いで橘の対応に出ています。
このようにサイドチェンジに対してSBのみが対応に出るというのは現実でもよく起きる現象です。
ヘルタ戦、シャカのサイドチェンジから。トラオレが幅を作りフルゴタとジョンソンが中に残ってCBをピン留め、トレーラーを空ける。そこを狙ったマルヴィンがワンクッション入れてインナーラップしたSBノルトヴェイト pic.twitter.com/7CZDQL35QM
— とんとん (@sabaku1132) May 18, 2016
サイドチェンジ+SBのインナーラップの組合せは最恐だと思う。絞ったヘヴェデスがサイドチェンジを受け、エジルが張り出す事でSBを釣り出しスライドにズレを。空いたチャンネルにヘヴェデスがラン、ミュラーも侵入してクッション。 pic.twitter.com/K6xIz22iKE
— とんとん (@sabaku1132) June 18, 2016
セルジ・ロベルトのランニング
①3vs3の同数から
・△の左、パウに出して左を回る→パウは右に叩いてオーバーラップ→底辺2人の意識を外に向ける事でインナーラップでフリーに
②ラキがSBピン留め、SHの意識が外に向くと同時に死角から抜ける
③サイドチェンジ+インナーラップ、チャンネル侵入の見本 pic.twitter.com/5QOUKH91hC— とんとん (@sabaku1132) January 24, 2018
(24秒からのシーン)
サイドチェンジの効果は、手薄なサイドに振るのと同時に、DFラインのスライドに乱れを生み出し、適切な距離感を奪うことです。
SBだけが対応を急ぐとCBとの距離(チャンネル)が大きく広がってしまいます。そこに侵入して見事決定機に顔を出したのが大友。
このサイドチェンジ+チャンネル侵入は様々なチームで見られる得点パターンであり、非常に効果的な攻撃となっています。その点について特別言及はされているわけではありませんが、スペースの変化がきちんと描かれていました。
11巻武蔵野戦
これは鳥肌ものでした…笑
左SB葦人:ダイアゴナルでCHと左CBを釘付けに
FW橘:左に流れて右SBを外に引っ張る
この時点でDFラインは左右に引き伸ばされ、分解されています。右のCBが広大なエリアを1人で守る状態ですね。
右SB浅利:ダイアゴナルで右CB手前に侵入。ポストに入りスクリーンまでこなす大仕事
大友:全員で作り出したスペースをきっちり把握して侵入。フィニッシュ。
近くのIHが走るのではなく、逆サイドからSB(浅利)が長い距離を走る事で、フリーの状態で右CBとマッチアップできました。
浅利はセレクション組を目の敵にしており、特に大友とは激しく衝突していました。そんな浅利がセレクション組(葦人と橘)の動きに連動。大友とバチっとアイコンタクトを決め最後は泥臭くスクリーンしながら大友のゴールをお膳立て。ストーリー的にも戦術的にも熱すぎるゴールでした…!
両SBによるダイアゴナル。かなり斬新で面白い発想ですがリスク管理も難しく、リアルではそれほど見られないプレーかもしれません。私もパッと思いついたのは下のシーンくらいでした。
同ダルムシュタット戦。3-5-2に変更後、シュティンドルの溜めにヴェントとコルプ2人のWBが中央裏抜けという芸当。客席で大喜びのシャカw pic.twitter.com/aFPZ8aYoeY
— とんとん (@sabaku1132) February 18, 2016
おわりに
…漫画の得点シーンについて熱く語ってしまいましたが、それだけサッカーの魅力と奥深さが描かれた素晴らしい作品だということです(笑)
この作品を読んでいると、サッカーをしたくなるのと同時に、「自分は何も知らずにサッカーしていたのだな…」と哀しくなります。私のクラブのコーチは「声出せ!」と「挨拶!」以外何も教えてはくれませんでした。もちろん大事ですが、そんなのは幼稚園や小学校でも学べます。
やっぱり指導者ってものすごく大事ですね。日本のサッカーもドイツのようにグラスルーツから改革していかないとだめなんだろうな…。「教えすぎてはいけない」って、日本に教えすぎてしまうほど教えられる指導者がそんなにたくさんいるのだろうか…。
ということで、サイドチェンジを絡めたチャンネルの活用方法と「アオアシ」という作品、是非覚えて帰ってくださいな!
裏サンデーが熱い…!
おまけ記事ついでに、更におまけのお話(笑)
小学館が運営しているWEB漫画サイト「裏サンデー」。皆さん知ってますか?
あの名作サッカー漫画「ホイッスル!」の続編である「ホイッスル!W」等を連載していて、どの漫画も最新話はなんと無料です。その中でもイチオシしたいのが「灼熱カバディ」という作品。
カバディってネタスポーツだろ、しかも灼熱ってなんやねん。そう思う方もいるでしょう。私もそう思いました。ルールも知らないまま読み始めましたが、これを読むとカバディを笑えなくなります。想像以上に奥深いスポーツです。アツいスポーツです。灼熱です。
カバディは簡単に言うと鬼ごっこです。
・相手の陣地に入り、敵にタッチして自陣に帰る。タッチした人数分得点をゲットできますが、自陣に帰る前に止められてしまうと守備チームに得点が入ります。
・一息で「カバディ、カバディ…」と唱えていられる間だけ攻撃することができます。
・タッチされた人はゲームから除外されます。守備の人数がどんどん減っていくわけです。
・攻撃手は残っているメンバーから選出しなければなりません。ただし攻撃に成功すると、ゲットした得点の分だけ除外メンバーが戻ってきます。
・全員除外されてしまった場合、敵に2点が加えられるのと引き換えに、全メンバーの帰還が許されます。
ざっくりとしたルール説明ですが、上記+さらにいくつかのルールの元で繰り広げられる駆け引き、両チームの戦略は非常に読み応えがあります。
距離感、ラインの高さ、配置、駆け引き、チェーン、連動、判断…。
特に守備の面ではサッカーに通ずるところが多々あります。
ストーリー中のルール説明も自然で丁寧です。
絶対読むべし!
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