【変則型4-3-1-2】アッレグリ・ユベントスの攻撃戦術の分析

【変則型4-3-1-2】アッレグリ・ユベントスの攻撃戦術の分析

前記事ではロナウドを組み込んだアッレグリ・ユベントスの守備戦術の紹介をした。
今回はロナウドとマンジュキッチを中心とした攻撃、変則型4-3-1-2にフォーカスしていく。


基本布陣

ユベントスの攻撃時の布陣は良い意味で曖昧だ。4-3-3から適宜左WGのロナウドがトップのマンジュキッチの脇へ、右WGのディバラがトップ下の位置に移動し4-3-1-2のような形に変化する。

これはWGもトップもこなせるマンジュキッチとロナウド、そして純粋なWGというよりもトップ下や2トップの一角としてのプレーの似合うディバラがそれぞれの特性を活かす上で大いに効果を発揮している。逆に、自らが移動してできたスペースを別の味方に使わせる、といった意図と効果は見られない。あくまで彼等前線3枚の個の力を活かすという目的のようだ。

WGもCFもこなせる選手というのはそれほど多くない。ましてや偽9番タイプではなくゴール前でターゲットとなれる長身選手となればなおさらだ。ユベントスにはそんな稀有なアタッカーが2人も在籍する。この特徴的な選手構成が、今のユベントスを形作っていると言える。

クロスボール戦術

クロスボール戦術についてはナーゲルスマン・ホッフェンハイム攻撃戦術の記事にて触れた。ホッフェンハイムとの違いは単純にターゲットとなる選手の質の部分。ホッフェンハイムのジョエリントンとベルフォディルに限らず、マンジュキッチとロナウドのコンビの前には霞んでしまう。

加えて、初期位置が4-3-3からの変化であるということ。単純な2トップではなく変化がつくため、守備側からすれば状況に応じてよりこまめな判断が求められ、その頻度も増す。

またホッフェンハイムは、クロスが流れたとしても逆サイドの大外WBが構えるため、FWが競り負けても流すことができればOKという保険をかけているが、弾かれた時の保険は特にかけていない(ユベントスについては後述)。逆に共通する部分としては、やはりロングボール戦術を高レベルで扱うチームはこの「回収」の部分までを計算に入れているという点である。

前進の方法

高さのあるCBとのマッチアップを回避し、比較的身長の低いSBとの競り合いを選択しボールを収める手法は有名である。ホッフェンハイム同様、SBが流れたボールを回収するケースも少なくない。

特徴的なのは速攻時。ロナウドとマンジュキッチが同サイドに位置することで流れたボールの回収役も兼任する。つまり、ロナウド&マンジュキッチvs敵SBの構図だ。通常の空中戦でさえマンジュキッチ、ロナウドに勝つのはSBにとって至難の業であるが、ボールが流れてももう一方が拾う数的不利の状況だ。DFからすれば非常に対応が難しい攻撃である。速攻時、味方SBが上がる時間が無い場合でも、流れたボールの処理が可能なのだ。

またこれは空中戦だけでなく地上戦でも効果を発揮する。2人でチャンネルと大外に立てば、SBはどちらか一方に対応するしかないため、もう一方がフリーでボールを受けられる。

ロナウドがチャンネルに立てば、爆発的なスピードでDFを外しシュートやクロスに持ち込むことが可能だ。圧倒的な個人能力を活かすのにベストな状況が作り出される。

アタッキングサードにて

アタッキングサードに入った際、ロナウドとマンジュキッチがゴール前に揃う状況を創り出すことができれば、敵DF陣に大きな脅威を与えることができる。

マンジュキッチは前進手法と同様、ファーサイドに位置してSBとのマッチアップを狙うことが多くなっている。

そして、こういったゴール前での脅威をさらに倍増させるのがマテュイディの存在だ。

マテュイディは圧倒的な運動量でチャンネルを陥れる役目を果たす。彼のこの動きが、クロスボール戦術を引き立てる効果を持つ。

ゴール前にロナウドとマンジュキッチが揃う場合、チャンネルに抜けるマテュイディを誰が見るか?通常は、高さのあるCBをゴール前に残してターゲットにぶつけたいという思いから、アンカーがチャンネルケアに向かう(IHはピャニッチやベンタンクールとマッチアップ)。そうなった時に狙い目となるのがマイナスのクロスであり、トップ下化するディバラが選択肢に組み込まれてくる。彼はトップ下でリンクの役目を果たすとともに、フィニッシャーとしての役割も担っているのだ。

ではロナウドが左に張っている場合はどうなるか?

アンカーがチャンネルのケアを行うのであれば上述の通りマイナスのクロスをディバラが狙う。中にマンジュキッチしかいないためCBが対応に出ても良いが、結局マンジュキッチvsアンカーのミスマッチの誘発や、ディバラがニアやCB間を突く形を狙うことができる。

このようにマテュイディのチャンネルランはゴール前の情勢を変化させる効果を持つ

中盤3枚の役割

特徴ある前線3枚を活かすのが、優れたバランサーの揃う中盤3枚だ。

前記事での守備戦術でも触れたが、マテュイディ、ピャニッチ、ベンタンクールで構成される中盤3枚のバランス調整力は非常に優れている。それは守備だけでなく攻撃においても言える。カウンターのリスク管理と攻撃の厚み出しのバランスを考慮してプレーできる3人は柔軟にプレー選択を変えることができるが、当然ある程度の役割分担が存在する。

マテュイディの役割は前述の通り。この項はピャニッチとベンタンクールに触れる。

この2人は低い位置での組立てに関与、クロスのセカンドボールを回収し二次攻撃に繋げる役目を務める。

前記事にて

どんなにクロスボールが武器だと言ってもその成功数は失敗数を大きく下回るはずだ。つまり、失敗した際のセカンドボール回収までをパッケージ化して落とし込んだチームの方が圧倒的にクロスボール戦術の完成度が高いと言える。

と述べた。低めの位置に2人を割いているのは上記の他に、ピャニッチもベンタンクールも前進してマークを外すプレーが上手いということも影響しているだろう。

ピャニッチはチェルシーのジョルジーニョのように、キエッリーニやボヌッチからこまめに引き出したり、自身を囮に使ったりすることで前進するのに有利な状況を作るのが上手い。加えて、自身も前進することでFWのマークから逃れる絶妙なポジショニングが光る。FWとしてはどこまで追走するか判断に迷うところだ。FWの守備位置が下がればカウンターが難しくなるうえに、CBへのプレッシャーもかからなくなるため守備が後手に回る。

2枚を残す事で、上記前進の動きを図っても中盤が空にならないのだ(プレッシング、セカンド回収時にも前進が必要)。

ベンタンクールはカバーシャドウや死角からのボール奪取などのカウンター対応だけでなく、ターンの技術が非常に高い。小さな動作で色々な方向に身体を向けることができる。これは敵の視線を釘付けにするとともに、敵の動きを止めるという牽制の効果を持つ。

こちらの記事で紹介したカバディでもこういった守備者に対する牽制が用いられる。牽制が入れば守備側はとりあえず絞って中央を固めるだろう。絞って外が空けばクロスボールを入れやすい環境が出来上がる。それに対してSBが対応に出てくればマテュイディがチャンネルを陥れるだろう。

これら組立てで役立つスキルを備えた2人が細かいパス交換でボール保持を安定させ、良い形で前線に繋げるのだ。

このシーンは彼等3人の特徴がよく出ている。
ピャニッチ、ベンタンクールでのボール保持安定からマテュイディのチャンネル侵入、セカンドボールの回収まで。

このシーンも同様、マンジュキッチがサイドで高さを活かして収めた後、ピャニッチとベンタンクールで敵中盤のポジショニングを操作しマテュイディをフリーにしている。そこからやはりチャンネルに侵入しIHを押し込み、マイナスクロスを入れやすくしているのが分かる。

おわりに

守備時は4-4-2→4-2-3-1、攻撃時は4-3-3→4-3-1-2と非常に変則的な動きを見せるユベントス。ロナウドのようなスーパースターが加入すれば、彼を活かす事を最優先とし、バランスを取るために選択肢が絞られ、チームとしての柔軟性が損なわれるかに思えた。

しかしアッレグリは、逆に柔軟にシステム変更を加える事でロナウドという良い意味での異物をチームに組み込んでみせた。予想外のアプローチである。これはロナウドのマイナスの部分をカバーし、ロナウドの長所を活かす、ロナウドが動くから全体のポジションを微調整するというロナウドが居てこその変則システムだ。ただしアッレグリであれば当然応用を利かせる事もできるのだろう。

ロナウドを組み込むという困難なミッションを短期間で、高レベルでこなしてみせたアッレグリはやはり世界屈指の名将と言えるだろう。


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